2013 Fiscal Year Annual Research Report
音韻論的言語類型論における新しい分析概念装置「拡張韻」の提案
Project/Area Number |
23652082
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
中川 裕 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (70227750)
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Keywords | phonology / typology / Khoisan |
Research Abstract |
4月にデンマークのオーフス大学での研究集会に参加し、昨年までの成果をふくむコイサン音韻論における類型論的視点からの新研究領域を提案した。7月には南ア共和国のウィットウォータースランド大学での国際学会においてコイサン諸語にみられる類型論的音韻論的にみた拡張韻(2モーラ語根)の音素配列論的特徴について基調講演を行った。本研究が提案する「拡張韻」的な分析装置がBeach (1938) の"fianal"という概念(語根内単位)にその萌芽を再発見できるという研究史的新知見も報告し、アフリカ言語学における類型論的音韻論の新展開法を提案した。さらにボツワナ共和国のハンシー県でのフィールド調査により南西カラハリ・コエ諸語の追加資料を収集した後に、同県在住のナロ語専門家ヘセル・フィセル氏と面会し、拡張韻によるナロ語根の分析について、フィセル氏が蓄積してきたナロ語の大規模な語彙データベースをふまえて具体的な検討を行った。そして、拡張韻という音韻ユニットの適用がナロ語の音素配列論および声調の構造的特徴を捉える上で有効かつ妥当であるという見解を共有した。 8月中旬から9月中旬にかけて、マックスプランク進化論人類学研究所言語学部門を訪問し、彼らとの昨年度までの考察結果をさらに敷衍する調査に着手した。ベルリン大学トム・グルデマン教授およびクリストフリート・ナウマン博士とはとくにTaa語群について、アンネマリー・フェーン研究員とは彼女が調査中の東カラハリ・コエ諸語について、それらの音韻論における拡張韻の有効性を具体的に検証するための分析を開始した。さらに3月にナウマン博士を日本に招聘し、本研究の成果にもとづく新プロジェクトのための類型論的音韻論分析のツール(一連の仮説と検証のための調査票)を試作した。京都大学での国際セミナーでともに研究成果を発表した。
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Research Products
(6 results)