2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23652110
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
名嶋 義直 東北大学, 文学研究科, 准教授 (60359552)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 |
Research Abstract |
日本語学習者の心的文法を明らかにするため,日本語学習者を対象にした質問紙調査を行った。調査協力者は韓国人学習者59名,中国人学習者36名である。質問紙は韓国語と中国語に翻訳した。調査に使用する文型は「のだ」文,「のか」文,「のではない」文である。それぞれの文について,例文の列挙(心に思い浮かぶものを思い浮かぶ順番に列挙させる),それぞれの例文の文脈,それぞれの例文の用法に名付けをさせる(意味機能に関するメタ認知の実態を探る),当該文型を教師からどのように教わってきたか,日本語学習に関するビリーフ,の5項目を調査した。 調査は本研究代表者が,3月15日-20日の日程で,韓国の聖公会大学校と明知大学校,中国の上海財経大学を訪問し,日本語教員に調査の目的と手順を説明して実施した。聖公会大学校のみ本研究代表者が調査に同席したが,他はカリキュラム上の都合により各大学の日本語担当教員に実施と回収を代行してもらった。回収された質問紙は郵便で送ってもらった。 調査結果は現在分析中であるので詳細は記載できないが,学習者の心的文法の内実を示唆する興味深い事実が何点か見えてきている。たとえば,現代日本語学研究や日本語教科書などで典型的な例文としてあげられているものが必ずしも学習者の例文として先に想起されるとは限らないこと,「のだ」と準体助詞「の」との区別がついていない学習者が一定数存在すること,「のか」や「のではない」については「のだ」よりも例文の記載が減少し用法のバリエーションも幅が狭いことから「のだ」に比べると習得の順序が遅いこと,などである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
自然災害による影響が大きかった。 まず,東日本大震災の影響が挙げられる。研究代表者の勤務する大学も被災し,周囲の状況も非常事態であり,研究教育に従事できたのは年度半ばであった。また,当初の計画では国内で韓国人学習者を対象に予備調査を行う予定であったが,震災の影響で予定していた学習者が来日せず実施が困難となった。 そのため,予備調査を行わずに本調査を行うべく,タイの大学と連絡を取っている段階でタイで大洪水が発生し,調査が困難となったので,改めて調査協力先を検討することとなった。 最終的には予備調査を行う予定であった大学とは異なるが,韓国の2大学,当初本年度の調査対象ではなかったが中国の1大学において調査を実施したが,調整に時間を要し,年度末の実施となった。
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Strategy for Future Research Activity |
まず昨年度実施した質問紙調査の詳細な分析と考察を行う。それをもとに,日本語教育において,「学習者のメタ的な文法理解の実態」という観点を踏まえて,理解されやすい記述内容や誤用を生み出さない記述内容等に関する提言を行う予定である。たとえば,当該文型に関して,シラバスに取り上げる必要性の高い項目はどれか,その文法項目に関する文法記述の方法,などである。研究成果は10月27日-28日に開催される日本語文法学会において発表する予定である。 それと並行して,前年度に調査を実施しなかったタイ(コンケン大学・サイアム大学),インド(ネルー大学,デリー大学)の中から1校(可能であれば2校)を選び,23年度の場合と同様の手続きで本調査を行う。調査において学習者から得られたデータを整理し,分析・考察を行う。結果をまとめ,これに関してもコミュニケーションのための新しい日本語教育文法の構築に寄与するために,日本語教育の発展に資する提案を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
旅費に関しては平成23年度より金額が増えている。これは,昨年度の渡航国が韓国・中国で,日本から比較的近距離であり,かつ,旅行日程を一度で済ませることができたのに対し,平成24年度はタイ・インドと遠距離であり,それぞれ独立した日程になると思われること,また,研究最終年度であるため積極的に成果発表を行う予定であることによるものである。 人件費・謝金における使用額は、昨年度実施した質問紙の翻訳に関するものを平成24年度実施分とあわせて使用する予定の金額である。これは昨年度の調査の実施が多少遅れたためその処理が平成24年度にも継続するため,また,他地域において同様の調査を平成24年度も行うため,一括で支出を行いたいと考えたためである。
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Research Products
(2 results)