2013 Fiscal Year Annual Research Report
平安時代貨幣制度の変容・崩壊過程に関する基礎的研究
Project/Area Number |
23652161
|
Research Institution | Kansai University of Welfare Sciences |
Principal Investigator |
森 明彦 関西福祉科学大学, 社会福祉学部, 教授 (90231638)
|
Keywords | 古代銭貨 / 隆平永寳 / アンチモン / 饒益神寳 / 神功開寳 / 料銅不足 / 鋳銭司 / 古和同 |
Research Abstract |
本年度の成果は、以下の三点を挙げることができる。 一、平安時代最初の貨幣である隆平永寳と旧銭の関係について新見解を学術論文の形で の公開を行った事。 二、平成二十三、四年に行った鋳造実験で得られた知見を学術論文集の中で述べ、平成二 十六年度中に広く公開することができるに至った事。 三、平成二十三年年度に行った学会発表の内容を、準備中の著書に組み込み、平成二十六 年度中に広く公開することができるに至った事。 それぞれについて簡明に述べていきたい。第一点に関しては、『出土銭貨』33号に「平安時代銭貨の二、三の問題」が掲載された。当該論文においては、富壽神寳に始まる小型化、饒益神寳以降顕著となる平安銭貨の中で、それとは対局的な隆平永寳に関するもっとも基本的な史料である『日本後紀』の欠字部分の推定を行い、奈良時代貨幣の停止に関して、従来の非停止説や延暦年間停止説を批判し、大同二年停止説を呈示した。第二点に関しては、平成二六年末発刊予定の続日本紀研究会の記念論文集に寄せたものである。そこでは平安時代銭貨の最後尾に位置し、きわめて粗悪な事で知られる乾元大宝の金属組成と同じ割合で鋳造温度鋳造実験を行った知見を元に、金属の比率に関しては鉛銭以外は見た目には粗悪化とは無関係である事、むしろ鋳造温度が大きな意味を持っていること、粗悪化は、米などの労働者に支給する料物の不足が最も大きな原因であるとして、従来の銅不足による粗悪化との説では説明不十分である事を指摘した。第三点に関しては、古和同が平安時代の隆平永寳や富壽神寳の材料として鋳直されたとする説を批判し、鋳直しの原料となったアンチモンを多く含む銭貨は鋳造時に異様な鋳造体制を取った神功開寳によっているとみなすべきであると論じた。
|
Research Products
(2 results)