2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23653020
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
神田 宏 近畿大学, 法学部, 教授 (40257960)
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Keywords | テキスト・マイニング / 裁判員 / 裁判官 / 量刑 / 死刑 / 無期懲役 / 情状 |
Research Abstract |
本研究は, 裁判員裁判導入を挟んで約10年間に言渡された刑事判決の内, 死刑科刑の是非を検討した事案について, 実証的手法 (テキスト・マイニング) を用いて裁判官・裁判員の評価・判断の過程を探るとともに, 裁判〔員〕制度の前提となる, 人の一般的・生活的な法的評価の実体を問うことを企図したものである。 2002年以降に言渡された639件の刑事判決中その量刑理由に係る判示部分について, 情状に関する判断・評価の視点・枠組みを, 死刑・無期懲役の言渡し間, ならびに, 裁判官・裁判員間で, 対照的に可視化することに取り組んだ (統計パッケージとしてKH CoderおよびSPSS Text Analytics for Surveysを用いた)。 ①死刑判決において殺害や犯行結果, さらに犯行の社会的影響 (遺族の被害感情を含む) に関する語句の出現確率が高いのに対して, 無期懲役判決においては被告人や犯行計画といった主観的側面や被害者に関する語句の出現確率が高いこと, ②裁判官による死刑判決では犯行結果や被害感情, 社会的影響に関する語句が特徴的であるのに対して, 裁判員裁判では犯行態様に関する語句が特徴的であること, さらに③犯行態様から被告人の犯行前の事情, 被告人の犯行後の事情及び被害感情・社会的影響へと至る3軸が量刑の主要要素であることが明らかとなった。 刑事判決の中で量刑判断は, 犯罪事実のみならず行為者・被害者などに関する事情一切を評価するものであり, 評価・判断者に対する視線が重要であるから, 本研究成果は, 裁判官・裁判員の思考過程の解明にも有用となることが期待される。 本研究を通じて, 従前の情状研究の知見と概ね合致し, 施行後3年を経て法の定める検討の時期を迎えた裁判員裁判の制度を考える新視座としてテキスト・マイニングの手法が有用であることも確認できた。
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Research Products
(3 results)