2012 Fiscal Year Research-status Report
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23653090
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
玉木 俊明 京都産業大学, 経済学部, 教授 (10288590)
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Keywords | 国際研究者交流 / 国際情報交換 / ネットワーク / 情報システム / 海事情報 / 電信システム / 帆船 / 蒸気船 |
Research Abstract |
平成24年度は、単著として、『近代ヨーロッパの形成――商人と国家の世界システム――』創元社を出版した。この一部で、近代ヨーロッパ形成における情報の重要性を論じた。 口頭報告として、平成24年7月5日 International Maritime Economic History Association Congressで、セッションをオーガナイズした。セッションのタイトルは、”Early Modern Hamburg: The Commercial Hub linking Atlantic Economy with Northern and Central Europe”であった。このセッションでは、近世の情報ネットワークに関しても扱った。さらに、Early Modern Economy and Trade: Nordic and Portuguese Experiences: 13-14 December, University of Jyvaskyla,で “Economic Growth in Edo Period”を報告(12月14日)し、近代日本の情報システムについて言及した。また、国際日本文化研究センター 人文諸学の科学史的研究(井上章一代表)「二人のO(大塚と越智)とその影響ーー東京と京都の歴史学」をおこなった。そこでは、東京と京都の学問のあり方と情報の関係についても話した。 さらにユヴァスキュラ大学、ストックホルム大学、マンチェスター大学などの図書館で、近世から近代にかけての各地の情報システムに関する資料を収集した。そして2013年3月16日 ニース大学教授シルヴィア・マルザガリ氏を招聘、研究会を開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在のところ、当初の研究計画とは異なっている部分もあるが、おおむね予定通り計画は執行できているといってよい。 本年度は、海外で2回研究発表をおこなった。一回目は、2012年7月5日 International Maritime Economic History Association Congressであり、ここで、セッションをオーガナイズした。セッションのタイトルは、”Early Modern Hamburg: The Commercial Hub linking Atlantic Economy with Northern and Central Europe”であった。二回目は、フィンランドのユヴァスキュラ大学で、Early Modern Economy and Trade: Nordic and Portuguese Experiences: 13-14 Decemberというワークショップに参加し(12月14日)、 “Economic Growth in Edo Period”を報告し、江戸時代における日本の情報ネットワークの発展について論じた。これらの報告により、ヨーロッパと日本に関する情報ネットワークの進展についての研究が大きく深まったことになる。 さらに、2012年8月には、『近代ヨーロッパの形成――商人と国家の世界システム――』創元社を上梓し、そのうちの一章を割いて、情報ネットワークの進展が、どのようにしてヨーロッパ経済の発展に寄与したのかを論じた。さらに、経済史はこれまで有形財(tangible goods)の研究が中心だったのに対し、無形財(intangible goods)の研究も重要だと主張した。 このような成果があったが、研究予定と比較すると、アジアの研究が不十分であると感じられる点がマイナスであったといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ、とくに近世のヨーロッパの情報ネットワークのありかたについては、十分な研究の進展が見られたと考えている。今後は、さらにアジアの情報ネットワークについて研究を深め、ヨーロッパとの比較をおこないたい。 情報の非対称性が大きな社会であれば、企業家が市場に参入する機会はなかなかえられない。企業家が市場に参入しやすい社会が最初にできたのが近世のヨーロッパであり、その点についてはさまさまな資料調査をおこない、かなり明らかにすることができたと考えている。しかしその一方で、アジアがどのようにして情報の非対称性が少ない社会を実現したのか、あるいは実現できるのかということについては、あまり研究がはかどっていない。 そのためには、ヨーロッパのみならず、アジアにおける資料調査が不可欠である。本年度は、7月にリスボンで開催されるポルトガルの歴史学会に出席することで、ポルトガルとアジアとの情報ネットワークについて研究したい。また、同時に、ポルトガル国内での資料調査に従事したい。 さらに、アジア経済に関する資料収集をする。とりわけ、近年経済成長が著しいベトナムを中心にして資料調査をしたい。その場合、国家がどのようにして情報の非対称性を少なくする政策を遂行しているのかを研究することが最大の課題となる。 また、近世から近代にかけての情報ネットワークの発展、さらには近代から現代社会にいたる情報システムがどのように変貌していったのかということを中心に研究を進める。近世のヨーロッパで形成された情報社会が、近代世界の形勢にどのような影響をおよぼしたのかということを研究する。さらには、ヨーロッパが中心となって形成された近代世界が、やがてアジアを中心とするであろう未来社会にどのようにして転換していったのかを考察したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(5 results)