2011 Fiscal Year Research-status Report
精神障害者の在宅勤務の促進要因と支援のあり方に関する実践的研究
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23653160
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Research Institution | Chubu Gakuin University |
Principal Investigator |
山岡 由美 中部学院大学, 人間福祉学部, 講師 (30410442)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安藤 寛美 中部学院大学, 人間福祉学部, 講師 (50440582)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 就労支援事業所 / 在宅就業支援 / 精神障害 |
Research Abstract |
予備的調査を踏まえ、引き続き精神障害者を対象としている6カ所の在宅就業支援団体および就労実績のある障害者福祉事業所に対して実地調査を行った。そして本年度の中心課題である、全国の精神障害者が利用している就労移行支援事業所、就労継続支援事業所に対して就労支援活動に関するアンケート調査を実施し報告書(速報版)にまとめた。実地調査では、就労支援の対象者が統合失調症圏にある人たちから広がりを見せており、すべての調査先で発達障害のある人たちの利用の増加が近年の特徴として挙げられていた。これは予備的調査においても同様であり、さらにそのことを裏づけることとなった。アンケート調査では、就労移行支援事業所、就労継続支援事業所(以下、支援事業所と言う)を対象に、2150箇所分(部数)を送付し、有効回答数は550部(25.6%)であった。(東日本大震災の影響を考慮し、宮城県・岩手県・福島県を除く44都道府県を対象範囲とした)特徴的なアンケート結果内容について挙げると、支援事業所の実施形態は「多機能型実施」が472箇所(85.8%)であり、単独実施を大きく上回っていること、民間企業への就労実績では(平成18年度以降)、半数以上の支援事業所で実績が示され年度を経るごとに増加しているものの、4割を超える支援事業所で実績が示されていなかった。これは自由記載などを踏まえると、就労支援に向けた活動を行う上で職員の業務が多く、就労のための活動時間が保障されない、授産活動に多くの時間をとっている、職員の就労支援に対するノウハウが不十分といった事業所側の要因によるものと、不景気による影響、企業の絶対数の少なさ、企業の理解不足・偏見などという外的要因という側面の両面によるものと推測された。特に事業所においては、利用者の賃金(工賃)の確保と就労に向けた活動という側面が求められており、大きな課題であることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
就労実績のある支援事業所に対する就労に向けた支援方法・体制に関する調査については、全国規模のアンケート調査を実施できた。現在の到達度としては、支援の実際と就労の実態についての概要については把握できた。その結果については、「精神障害のある人たちが利用している就労移行支援事業所。就労継続支援事業所における就労支援活動に関するアンケート調査報告書(速報版)」を作成し、調査をお願いした全支援事業所に送付した。しかし、細部にわたる分析まではできておらず、就労に求められる能力や障害特性に応じた支援方法についての明確化が課題としてある。また、在宅勤務(非雇用型の在宅就業を含む)への実地調査数がまだ少なく、実施箇所での共通する対象者や職業上の困難については把握できたが、在宅勤務に求められる能力や技能を示すこと、在宅就業・在宅勤務支援団体の機能と課題について明らかにすることはできていない。
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Strategy for Future Research Activity |
実施したアンケート調査に基づいてより詳細な分析を行い、就労に求められる能力や障害特性に応じた支援方法について明確にしていくこと、就労に結び付けていく上での支援事業所および企業の理解不足などの阻害要因について明らかにしていくことがあげられる。とりわけ阻害要因の大きなものとして、支援事業所は、利用者の賃金(工賃)の確保と就労に向けた活動という2本の柱が求められており、このことが就労支援のノウハウの構築や就労の実績に影響していると推測される。これらのことについて考察を深め、さらには福祉施策と労働・雇用施策のあり方を模索していく。在宅就業・在宅勤務支援団体への実地調査を引き続きすすめていく。厚生労働大臣登録の在宅就業支援団体および登録団体ではないが支援している団体は相変わらず増えていない。また地域的な偏在があり東北地方、中国地方は空白地帯にある。支援団体の増加を阻む要因も含め、求められる機能について研究を進める。あわせて、精神障害のある人たちが在宅勤務に結びついたケースについて分析をすすめ、かつ、他障害でのケースに関しても検討を加え、共通すると考えられるノウハウや支援方法を抽出する。研究を遂行していく上で、実地調査を分担できる研究協力者が必要であり、対応を急ぎたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の使用計画としては、1.実地調査に伴う旅費、人件費および調査先への謝金2.本年度実施したアンケート調査のさらなる分析を進めるために、クロス集計作業に かかわる経費を主たる研究費として計上する。
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