2011 Fiscal Year Research-status Report
社会的相互作用の中に立ち現われる心理学的な過去と未来の研究
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23653174
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Research Institution | Shukutoku University |
Principal Investigator |
大橋 靖史 淑徳大学, 総合福祉学部, 教授 (70233244)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 時間的展望 / 社会的相互作用 / 占い / 会話分析 / ディスコース心理学 / ディスコース分析 |
Research Abstract |
未来-現在-過去について語り合う社会的相互作用の場である占い場面において、占い師と相談者の間でかわされる語りの定式化の特徴や会話の進展に伴うコミュニケーションの特徴について分析を試みた。 平成23年度は、刊行されている占いに関する書籍やさまざまな資料を収集し、占いの現状について把握するとともに、データ収集を依頼する研究協力者としての占い師のリストを作成した。そして実際に占い師のもとを訪れ、研究の概要について話し、録音もしくは録画の許可が得られた場合は、研究代表者もしくは学生や知人といった研究協力者が相談者となり、占い師と相談者のやり取りを記録した。その結果、7ケースのデータを録音収集することができた。また録音や録画の許可がとれなかった場合には、占いのやり方などについて占い師に自由に語ってもらい、その内容を記録した。 得られた音声データについては、会話分析やディスコース分析を行うため、プロトコルに書き起こした。書き起こしにおいては、ポーズや声の重なり、声の強弱なども記号化しデータ化した。そのうえで、やり取りの特徴について分析を行った。分析の結果、占い師は相談者の未来について語る際に未来形を用いて語ることはせず、現在形で主に語ること、その場合、現在形で語ることにより未来の不確定性が減じることになるが、確定的に語った後で未来が不確定であることを小声で付け加えることで、語りの信ぴょう性を増す語りをすることなどが明らかとなった。 こうした分析を行うことにより、占いという場において過去や未来がいかに立ち現われるか、その特徴を明らかにすることが可能となった。また、こうした分析手法は私たちが生活するさまざまな場面において立ち現われる過去や未来に関する陳述を分析することを可能にすることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
まず、2011年3月に東日本大震災が発生し、社会が落ち着かない状況にあり、且つ、科学研究費の交付金額等も未確定な状況が続いたため、データ収集の開始時期が当初予定していたよりも遅れた。 また、2011年度は7ケースのデータを収集することができたが、これは当初予定していた25ケースよりかなり少ないケース数であった。データ収集の際には、メールや電話などでアポイントメントをとり出向いたり、占い師が占いを行っている場所にアポイントメントなしで直接赴いたりしたが、研究の概要について話し、録音や録画の許可を得ようとすると録音や録画を断られるケースも多かった。占うこと自体は問題ないが、録音や録画に抵抗がある占い師が多かった。 そのため、2011年度・2012年度で40ケースのデータ収集を計画していたことから、占い師の許可を得、録音・録画データを当初の予定通り行っていくことが当面の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
データの収集を進めることが今後の大きな課題である。これまでの状況から、研究に協力的な占い師と協力的ではない占い師とに大きく分かれることが明らかとなった。また占い師の中にも初心者から熟達者までさまざまな段階が存在することも明らかとなった。そうした中で、占いの経験が豊富で且つ本研究に協力的な占い師の数はかなり限られてくるものと思われる。 そこで、当初の計画では占い師のもとにこちらから赴きデータを収集する予定であったが、上述の問題から、2012年度は占いの経験が豊富で且つ研究に協力的な占い師を研究者が所属する大学に招き、学内において占いを行ってもらうことを計画している。また、相談者は学生を中心に希望者を学内において募る予定である。この方法には以下の利点がある。まず、半日もしくは1日さまざまな相談者に占いを行ってもらうことによって、短期間のうちに多くのデータを収集することができる。また、実験室もしくは教室を利用することで、録音・録画装置をあらかじめ設置することが可能となり、詳細なデータの収集が可能となる。更に、占いの条件を統制したり、事前事後に相談者へのインタビューが可能になるなど、より統制された研究が可能となる。 こうした方法をとることで、当初予定したデータ数を確保することが可能になるとともに、より統制された条件下でのデータを得ることが可能となる。ただし、この方法では、占いを行う部屋がもつ雰囲気といった占いの場の影響が減じることは否めない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述したように占いの経験が豊富な占い師を大学に呼び、半日ないしは一日占いを行ってもらうためには、相当の費用が必要となる。2011年度は占い師に支払った費用が予定していたよりも少なかったことから、2011年度に使用しなかった研究費もこのための費用にあてる予定である。 また、短期間のうちに集中してデータを収集した場合には、データ起こしを研究者自身が行うことが難しくなることが予想される。そのため、データ起こしを専門とする業者に依頼する必要が生じてくる。このための費用も必要となる。2011年度は収集したデータ数が少なかったこともあり、データ起こしのための費用が残っているため、残った費用をこのために利用する予定である。 更に、少数事例の分析ながら、2011年度に行った研究結果にはこれまでにない新たな知見が存在した。そこで、2012年度はそうした知見をポルトガルにおいて開催予定の第1回時間的展望国際会議において発表する予定である。そのため、渡航費や発表費が必要となる。
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Research Products
(2 results)