2011 Fiscal Year Research-status Report
少子高齢社会の動物社会モデルとしての嵐山ニホンザル集団における行動観察研究
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23653225
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中道 正之 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (60183886)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ニホンザル / 超高齢メス / 老化 / 毛づくろい / 優劣順位 / 長期縦断研究 |
Research Abstract |
嵐山ニホンザル集団にいて、25歳以上の超高齢ニホンザルメス17頭(最高齢、32歳)の追跡観察を実施して、以下のことを明らかにした。25歳から32歳の個体の間では、休息あるいは移動行動などの身体活動性の指標と年齢の間には優位な相関は見いだされなかった。従来の研究では、少数の高齢メスは、向老期(15歳から20歳)のメスに比べて、休息が多く、移動行動が少ないという加齢に伴う行動変化が確認されているが、超高齢メスになると、そのような変化はほとんど生じなかった。しかし、超高齢メスの中では、順位が高いメスは、横になって休息することが多いのに対して、低位のメスでは座っての休息が多い傾向が確認できた。他個体、とりわけ優位個体との社会交渉において適切な行動が求められる低い個体は、超高齢になっても、その様な行動がとりやすい姿勢、状況を維持していることが明らかとなった。さらに、毛づくろい関係については、血縁個体に集中する超高齢メスだけでなく、非血縁メスと多く毛づくろいする超高齢メスの存在も確認できた。つまり、超高齢メスにおける社会関係の多様性が確認でき、老化に伴った社会関係の変容プロセスは一様でないことが確認できた。嵐山集団と比較するために、勝山集団(岡山県真庭市)の観察も実施した。主に、オトナメス全頭の毛づくろい関係を記録し、年齢が、毛づくろい関係に影響を与えるのかどうかを分析した。勝山集団では、最高齢が24歳で、超高齢メスは存在しないが、5歳から10歳、10歳から15歳、15歳以上の年齢区分において、高順位メスでは、加齢に関係なく、毛づくろいを受けていたが、低順位メスでは、高齢化するにしたがって、特に、非血縁雌から受ける毛づくろいが少なくなり、これが低位メスにおける社会的孤立の促進になっている可能性が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
嵐山ニホンザル集団において、当初計画通り、超高齢メスの行動観察が順調に進み、比較対象の勝山集団でも毛づくろいデータは着実に収集できている。この状況を2年目以降も継続することによって、縦断的資料が得られると期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までと同様に、嵐山ニホンザル集団と勝山ニホンザル集団での行動観察を実施する。その具体的な方法は、平成23年度と全く同じであり、今後も、問題なく進められると確信している。さらに、研究の途中経過を、日本霊長類学会、日本動物心理学会等の学会で発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度においても、嵐山集団と勝山集団での野外調査を継続するための旅費(30万円)と研究協力者(3名を予定)への謝金(20万円)を主たる経費とし、さらに、調査に必要なビデオカメラ、一眼レフカメラ等の周辺機器、およびデータ整理のためのパソコンの周辺機器購入経費(30万円)として、総額80万円を使用予定である。
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Research Products
(5 results)