2012 Fiscal Year Research-status Report
身体背面部での触覚情報処理に関する心理メカニズムの解明:痴漢事件に関わる基礎研究
Project/Area Number |
23653231
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
大森 馨子 神奈川大学, 経営学部, 非常勤講師 (30533038)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和氣 洋美 神奈川大学, 付置研究所, 客員教授 (80122951)
厳島 行雄 日本大学, 文理学部, 教授 (20147698)
五十嵐 由夏 神奈川大学, 人間科学部, 非常勤講師 (50639581)
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Keywords | 触覚 / 身体接触 / 痴漢 / 身体背面部 / 手 / 感情 / 冤罪 / 記憶 |
Research Abstract |
本年度は,身体接触による快・不快感の検討と臀部における触判断の正確性についてさらなる検討を行った。 身体接触による快・不快感を検討するにあたり,大学生を対象に質問紙調査を実施した。質問紙では,身体の各部位を図示し,同性(または異性)の親友(または知らない人)に各部分を触られた場合どのように感じるか尋ね,“1:非常に不快”から“5:非常に心地よい”の5件法により回答を求めた。結果,男女共に触られることは不快であり,特に女性は男性よりも強い不快感を示した。また,調査協力者の性別や触れてくる相手の性別,相手との関係によって快・不快感は異なり,男女に共通して知らない人に触れられることへの強い不快感が示された。さらに男性は異性に触られるよりも同性に触られる方が,女性は同性に触られるよりも異性に触られる方が不快であることが明らかとなった。また,女性では主に性的な意味を帯びるか否かで快・不快感が異なり,男性では同性の親友関係において性的な意味をもつ部位かどうかによって快・不快感が複雑に変化することが示されたが,それ以外の関係性では身体部位別の違いは認められず,異性の場合は親密な方がどの部位も心地よく,同性の知らない人ではどの部位も不快と答える傾向がみられた。 臀部での触判断実験では,実験参加者の臀部に手のひら全体,手のひら側の指2本,指4本,手の甲全体,手の甲側の指2本,指4本,鞄などが提示された場合どのように知覚されるのか,また動きの有無によって判断に違いが生じるのか検討を行った。結果,動きの有無に関わらず,臀部における触判断が正答する確率が,もっとも高いものでも40%であった。また,誤った回答であるにもかかわらず,チャンスレベルを有意に超えて選択される刺激条件もみられた。これらの結果から,臀部では提示刺激以外で触られたという判断が頻繁に生じることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で実施しようとしている具体的な計画は,1. 痴漢被害の実態調査 2. 身体背面部における触判断の正確性に関する実験的検討 3. 身体接触による快・不快感情に関する調査研究 4. 閉所空間や多数身体部位への接触が身体背面部における触判断に与える影響 (再現実験) 5. 触覚における記憶の実験的検討,の5点であり,これらを3年間で検討していく計画である。 初年度には,はじめの2点 (1. 痴漢被害の実態調査 2. 身体背面部における触判断の正確性に関する実験的検討) が終了し,2012年度は「3. 身体接触による快・不快感情に関する調査研究」と「4. 閉所空間や多数身体部位への接触が身体背面部における触判断に与える影響 (再現実験)」を実施する予定であったが,実際に生じた痴漢事件から「2. 身体背面部における触判断の正確性に関する実験的検討」においてさらに詳細な実験条件を設定した検討が必要であると考え,これを実施したため予定していた「4. 閉所空間や多数身体部位への接触が身体背面部における触判断に与える影響 (再現実験)」を検討する事が出来なかった。そのため,やや遅れていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度では,再現実験と触覚における記憶の検討を実施していく予定である。 再現実験では,痴漢事件が生じる状況の特徴である,身動きがとれないほどの混雑状況や,電車やバスといった閉所空間を再現し,それらが触判断に与える影響を検討する。閉所空間や混雑状況を再現し実験的検討を行うために,2012年度に購入した空調が活用されるだろう。また,実験補助者10名程度に協力してもらい,混雑状況を再現する必要があると考えている。 触覚に関する記憶の検討では,痴漢事件が発生した後を想定し,実験を実施する。目撃証言に関する先行研究では,事後情報効果等による記憶の変容が報告されているため,触覚においても視覚と同様に記憶の変容が生じるのか検討していく。 これらに加え,本研究で明らかになった事実を,学会で発表すると共に,論文としてまとめ,報告する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
閉所空間や多数身体部位への接触が身体背面部における触判断に与える影響を検討するにあたり,混雑状況を再現する必要がある。閉所空間は,実験参加者にとって心地よいものではない可能性があるが,2012年度に購入した空調器具によって不快感を軽減させる効果が期待される。また,混雑状況を再現するための実験補助者10名程度が必要となるが,それらの実験補助者への謝金や実験参加者への謝金,さらには研究成果報告のための学会出張や論文投稿に研究費を使用する予定である。 また,触覚に関する記憶の検討を行うにあたり,実験状況を記録するためのビデオカメラ等が必要となるため,それらの購入にも研究費を使用したいと考えている。
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Research Products
(9 results)