2013 Fiscal Year Annual Research Report
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23654051
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
堤 誉志雄 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10180027)
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Keywords | 等温Falkモデル / Gibbs測度 / Kuksinの不変測度 / 解のア・プリオリ評価 / 確率Zakharov方程式 / 時間大域解 |
Research Abstract |
無限次元不変測度を構成する事はそれ自身興味深いだけでなく,不変測度を用いて解の大域的挙動について解析できるため,非線形発展方程式論の観点から重要な研究課題である.平成25年度は,形状記憶合金の数理モデル方程式である,等温Falkモデルに対して,Gibbs測度とKuksinの不変測度の2種類を構成した.その結果として,Kuksinの不変測度の構成には,エネルギー汎関数に対し,ある種の強圧性(coerciveness)が必要であることが明らかとなった.Gibbs測度の構成には,必ずしもエネルギー汎関数の強圧性は必要ないので,大きな相違点と言えよう.さらに,Gibbs測度とBourgainの議論を用いて,ほとんどすべての解に対し,Sobolevノルムの時間増大度に関する評価式を得た.これは,不変測度がGauss測度であるなら,方程式によらず成り立つ普遍的な評価式であること,及び決定論的な議論からは従わないことから,非線形発展方程式と確率論的議論の関係に重要な示唆を与えている.また,空間1次元の加法的ノイズが付加されたZakharov方程式の初期値問題に対し,Colliander-Holmer-Tzirakisによる決定論的なZakharov方程式に対する議論を確率微分方程式に拡張することにより時間大域解の存在を証明した.元々Zakharov方程式はプラズマにおけるLangmuir擾乱を記述する方程式であるが,ノイズ付きのZakharov方程式は,電離層におけるNEIAL(naturally enhanced ion-acoustic linesの略)と呼ばれる現象についての数理モデルとして,近年地球物理学の分野で注目を集めている重要な方程式系である. 研究期間全体を通して,確率効果が非線形発展方程式に与える影響を調べた.本研究課題は今後の研究の基礎になることが期待される.
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