Project/Area Number |
23654055
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
谷 温之 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (90118969)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井口 達雄 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (20294879)
高山 正宏 慶應義塾大学, 理工学部, 助教 (90338252)
野寺 隆 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (50156212)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | Maxwell medium / Navier's slip condition / Interface crack / Coulomb friction / tsunami generation / simple wave in Rheometer / 国際研究者交流 / イタリア |
Research Abstract |
23年度研究計画で作成したテーマについて, その研究実績の概要は以下の通りである.(1) 津波のモデル方程式の研究については, 海底変形に伴う水の波の運動に対し, これまでのモデル方程式より, 現象論的には合理的なモデル方程式を提案し, それについて数学解析を行った. 現実の津波現象との比較検討が待たれる. (2) 弾性方程式の2相問題については, 2つの有界非類似弾性体間に Coulomb 摩擦が作用するときの亀裂界面の形状決定問題に対する数学解析を行った. (3) 非ニュートン流体に対しては, いくつかの問題の数学解析を行った. 非圧縮性粘弾性媒質のひとつである, Maxwell媒質中を伝播する非線形波動についての研究では, 問題の定式化の段階で流体物理学者, 工学者からその重要性が指摘されていたにもかかわらず, 数学的取り扱いが困難なため, 研究がなされていなかった問題の数学解析を行った. 得られた結果はこの分野の研究の第1段階で, これに続く膨大で, 重要な問題の解析が待たれる. また, 粉流体方程式については, 粉流体を非圧縮, 非斉次流体状物体とみなしてモデル化した方程式系に対する一意可解性を, 非ニュートン流体に対する境界条件としては極めて自然でかつ重要な Navier 滑り条件下で証明した. さらに, 非ニュートン流体の物質定数の推定装置の一つである Rheometer 中の simple motion に対して, 特に粘性係数が圧力に依存する場合の解析を行った. (4) 血液流ではないが, トーラス中の流体運動の一例として, それ自身重要なトカマク中の抵抗性ドリフト波乱流の可解性についての研究も行った. この結果は, 将来血流体を同様な問題設定で考察する際重要になると思われるし, 海洋物理学における問題とも関連する重要な結果である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究テーマが多岐にわたっているので, 全ての研究が同レベルで進捗しているとは言えないし, 一見遅れ気味と思われるテーマもあるように見えるが, お互いに関連しているところも多いので, 研究の進展はおおむね順調と判断している.津波のモデル方程式の研究に関しては, 水の波解析の新展開として, 海底変形に伴うより合理的モデル方程式についての数学解析を行った. この結果の拡張として, Euler 方程式に対する同様の問題, Hurricane モデル方程式の解析が行えるものと考えている. 弾性方程式の2相問題については, 2つの有界非類似弾性体間に Coulomb 摩擦が作用するときの亀裂界面の形状決定問題を解析した. (粘)弾性方程式の2相問題における界面は, ある種の亀裂面とみなせるので, そこでの議論は, exact な境界条件下での2相問題の解析, さらには2相媒質の自由境界問題と捉えれば, 亀裂進展問題にも繋がるので, それらの問題に重要な知見を与えたものと考える. 非ニュートン流体に対する研究においては, Maxwell 媒質の中を伝播する非線形波動について考察したが, この結果はこの分野の将来の研究に展望を与えるものと考えている. 粉流体方程式についての結果は, 一般滑り(Tani), 閾値滑り境界条件下での解析に繋がる. これらは, Navier-Stokes 方程式の数学研究の歴史からも重要な研究と思われる. 物質定数を推定するのは, 物質科学分野では非常に重要な問題である. Rheometer を用いた非ニュートン流体の物質定数推定問題に対する我々の結果は, より一般の運動に対する研究の方向を示唆するものと考えている. 他の問題に対する結果も, それぞれ次の段階の研究に繋がるものと思っている.以上の理由から, 研究の進展はおおむね順調と判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
23年度の研究を受けて, 24年度以降の研究計画は以下の通りである.津波解析を単なる海底面崩壊後の津波モデル方程式の解析に止めず, マグマによるプレート移動と海水運動の連成問題として捉えて定式化し, その解析を行う. Hurricane(Emanuelモデル, 一般モデル) の解析と同時に, Tornade についての研究も行う. (粘)弾性方程式については, 2相問題(固定領域), 2相自由境界問題を中心に研究する. その結果を亀裂進展問題の研究に繋げる. 非ニュートン流体に対する問題は, 多岐に亘っているので, 次の問題に限定して研究する. サードグレイド非ニュートン流体方程式に対するNavier 滑り, 一般滑り(Tani)境界値問題; セカンドグレイド流体方程式の滑り境界条件下での初期-境界値問題; 非ニュートン流体に対する1相自由境界問題, 2相問題(固定領域), 2相自由境界問題. 有限長さの rigid tube 中を(非)圧縮粘性流体と遅い(非)圧縮粘性流体の流れに伴う2相問題の研究を行う. 続いて, helical tube, deformable tube, 曲がった管中の流れの考察. 非ニュートン流体, 特に血液流体に対し上と同様に設定された初期-境界値問題について考察する. 血液流体流れの研究においては, 脈動流の解析はとりわけ重要な問題である. この研究における問題設定上の関連性から, トカマク中の抵抗性ドリフト波乱流についての研究も併せ行う. 地球内部の熱対流, Thermal runaway, マントル流の数学解析は, 非ニュートン流体運動の数学解析の延長線上にあるとの認識に立ち, 研究する. 薄殻の非線形力学, flutter の解析も引き続き行う.これら研究の遂行には, 海外共同研究者, 連携研究者の協力が不可欠である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度の研究費は, 主として国内外の旅費に充てる計画である. 現在計画中の国内外の出張は 次の通りである.8月 Novosibirsk で開催される国際会議に出席し, 研究成果の発表と, 海外共同研究者 Pukhnachev, Khludnev とそれぞれ非ニュートン流体, 特に Maxwell 流体についての解析, 粘弾性体に対する亀裂伝播問題を中心に情報交換, 研究討論を行う. その後 St. Petersburg に Solonnikov を訪ね, 流体方程式全般の数学解析, セカンドグレイド, サードグレイド非ニュートン流体方程式の滑る境界値問題, 自由境界問題について, 情報交換, 研究討論を行う. 昨年度招聘を予定していた Rajagopal は都合によりキャンセルなったが,血液流を含む非ニュートン流体の研究推進のためには欠かせないので, 今年度招聘を予定している. 国内においては, 適当な時期に集中して行うことを計画している. 亀裂問題のさらなる発展には協力者伊藤(弘)との情報交換, 研究討論が不可欠と考えている. 滑らかでない境界を持つ領域における流体方程式の研究は, これまで協力者の伊藤(茂), 田中と行ってきたが, それを継続し, 特に血液流体, マントル流の解析に繋げるために訪問または招聘する. Hurricane を含む地球物理学における非線形現象については, 梅原との情報交換, 研究討論を密に行う必要があると考えている. Lavrentiev については, 6月に来日を予定していると聞いているので, その際共同研究進展のため招聘を計画している. その他必要に応じて, セミナー等に専門家を招聘し, 情報の提供を求めたいと考えている. 研究費をそのためにも充てる.
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