2011 Fiscal Year Research-status Report
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23654082
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
阿部 文雄 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 准教授 (80184224)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 知広 立教大学, 理学部, 准教授 (60402773)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 重力レンズ / 相対性理論 / ワームホール |
Research Abstract |
重力レンズ効果で生じる2つの像は、通常非常に近接していて分離が困難である。このため、ワームホールの検出法も重力レンズによる増光現象を利用する方法が考案されている。しかし、2つの像の重心を精度良く測定する位置天文学的手法を利用すれば、分離は困難でも位置のずれとして検出される可能性がある。今年度は、エリス・ワームホールによる位置天文学的な重心のずれを計算し、これが通常の星によって生じるずれと異なることを見いだした(Toki他, 2011)。この手法は、将来の位置天文衛星などによる高精度観測によるワームホール検出に道を開いた。また、エリス・ワームホールの重力レンズ効果の厳密解の導出に成功した。その結果、Dey & Senによる偏向角の高次の項は誤りであることが判明した。さらに、エリス・ワームホールのスロート近傍には、ブラックホールの周りに現れると考えられている様な、相対論的な多重リング像が生じることを突き止めた。観測技術が大きく進歩し、ブラックホールなどの周りにできる相対論的イメージが撮像できる様になれば、こうした多重リングからワームホールを検出できるかもしれない。また、ニュージーランドでの重力マイクロレンズ観測を継続し、2010年までのデータは測光を完了し、通常の星によるマイクロレンズ効果の解析を実施中である。また、ビクトリア大学でセミナーを実施し、ワームホールの世界的権威である同大学のMatt Visser教授と意見を交換し、来年10月に実施予定のワームホールの研究会に協力を要請した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
位置天文学的手法で検出可能であることが判明するなど、大きく進展した部分もある。しかし、全体として見ればおおむね予想通りの進展であり、大幅に計画を上回ったとまでは言えない。
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Strategy for Future Research Activity |
この研究課題は、世界的にほとんど全くと言って良いほど手の付けられていない、困難な問題に道筋を付けようとしている。これまでの進展をふまえ、次の段階として研究会を行い、理論・観測の研究者を集めさまざまな観点から議論を進める。重力レンズに関しては、エリス・ワームホールの重力レンズについては研究が進んだ。しかし、他のワームホールの重力レンズをどうやって計算するかが課題である。時空構造そのものは、それぞれのワームホールについてわかっているので、原理上は計算可能である。しかし、どのワームホールが可能性があるか、具体的にどうやって計算するかなど、問題は多い。その他理論に関しては、ワームホールと通常の物質との間の相互作用を理解することが、ワームホールの運動を理解する上で役に立つと考えられる。また、ワームホールの存在量を推定することも理論の重要な課題である。どこから手をつけて良いかも検討がつかない様な難問であるが、ワームホールの生成の可能性などの検討が重要と思われる。観測に関しては、重力レンズによる増光(マイクロレンズ)に関しては、すでにある程度データがあるので、解析を進めて、現時点での答えを出せる様に努める。具体的には、約100万個の光度曲線の中から、どうやってワームホールに似たものを選び出すか、検出効率をどう見積もるかなどの問題がある。これらの問題に解決策を見いだし、ワームホールの存在量に制限を付けることを目指す。位置天文学的な重力レンズ効果については、将来の位置天文衛星JASMINEの研究者などとの共同研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、10月に立教大学でワームホールの研究会を予定している。この研究会は、次年度のハイライトと考えており、予算は大部分この研究会の旅費にあてる。国内の理論・観測の研究者の他、海外からもワームホールの研究者を呼ぶ予定である。その他に研究打合せ、研究発表など、主に旅費に使用する予定である。
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Research Products
(25 results)