2012 Fiscal Year Research-status Report
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23654082
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
阿部 文雄 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 准教授 (80184224)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 知広 立教大学, 理学部, 准教授 (60402773)
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Keywords | 一般相対性理論 / 重力レンズ / 宇宙論 |
Research Abstract |
ワームホールは、離れた時空間を連結するアインシュタイン方程式の解である。しかしながら、その存在は全く不明で、あくまで理論的な研究の対象でしか無かった。重力マイクロレンズ効果を利用した、ワームホールの観測的検証法が提案さたことを受けて、理論・観測で何ができるか検討し、実際にワームホールの検証を行ってその存在量に制限を付けることが本研究の主な目的である。今年度は、これまでの成果を物理学会等で紹介するとともに、10月27、28日に研究会「ワームホール:その理論と観測的検証可能性」を実施した。ここで、ワームホールに興味を持つ研究者が集まり、その研究成果を紹介し合った。主な成果としては、相対論的なアインシュタインリングを使ってエリスワームホールを区別する方法(Tsukamoto, Harada, Yajima, 2012)の導入、重力マイクロレンズ効果による減光は、エリスワームホールに特有のものではなく、特殊な時空構造を持つワームホールでは普遍的に見られることの証明(Kitamura, Nakajima, Asada, 2012)、ガンマ線バーストの重力レンズ効果(pico lensing)を利用したエリスワームホール探索法(Yoo, Harada, Tsukamoto, 2012)の導入などが上げられる。また、将来の位置天文衛星JASMINEでのワームホール探索の可能性やワームホールの安定性に関する研究などもあり、初めてのワームホール研究会として実り多いものであった。研究会と合わせて行った一般向け講演会では、高校生や大学生など120人あまりが参加し、活発な質疑応答が行われた。 その後、さらに研究が進展し、Yooらによってcm程度のエリスワームホールの存在量に制限が付けられ、さらにTakahashiらによって、10-10000pcの巨大エリスワームホールの存在量に制限が付けられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の様に、当初計画にあったワームホールの存在量への制限は、ある意味で達成された。この意味では、予想以上の進展と言える。ワームホールの安定性や、ワームホール時空での重力レンズ効果など関連した研究も大きく進展した。位置天文衛星JASMINEでのワームホール検証の可能性など、新たな可能性も広がった。しかし、当初の目的の一つであったマゼラン雲の重力マイクロレンズ事象の解析の方は、あまり進んでいない。マゼラン雲の解析からは、100km以上のワームホールの存在量への強い制限が期待されており、現在でも重要な課題の一つである。これらの事情を総合して、全体としてはおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
前記の通り、本研究は部分的には予定以上に進展し、目標を達成した部分もある。しかし、これまでに得られた制限は、Yooらによる非常に小さな(1cm程度)ワームホールに対する緩い制限と、Takahashiらによる巨大(> pc)ワームホールに対する制限である。マゼラン雲のマイクロレンズ観測からは数100km程度のワームホールなので、この解析は意味があり、ぜひ実施したい。また、今後さらなる発展を目指しながら、新たな展開をはかることを検討したい。ワームホールの観測的検証、ワームホールの安定性などの研究に加え、ワームホールと同様に宇宙初期に生成したと考えられる原始ブラックホールについても研究を進め、新たな展開をはかる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、最終年度にあたりまとめの研究会を行う。予算は、主にこの研究会の旅費にあてる。
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Research Products
(38 results)