2012 Fiscal Year Annual Research Report
共鳴電子線散乱法の開発およびマンガン系ペロブスカイト酸化物の軌道秩序解析への応用
Project/Area Number |
23654117
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
齋藤 晃 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 准教授 (50292280)
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Keywords | 電子線 / 非弾性散乱 / 内殻電子励起 / 軌道秩序 / 遷移金属酸化物 |
Research Abstract |
本研究は、電子線の内殻励起非弾性散乱をもちいて種々の強相関電子系物質における d 電子軌道の配向秩序を解析する新しい手法を開発し、高温超伝導や巨大磁気抵抗効果など種々の興味深い物性を示すマンガン系ペロブスカイト酸化物の電荷・軌道秩序状態におけるd電子軌道の配向秩序の観察を試みたものである。本年度の研究実績は以下の通りである。①本手法の有効性を検証するため、電子構造が既知のグラファイトおよびMgB2に本手法を適用し、ホール状態の解析を行った。グラファイトおよびMgB2はいずれもsp2混成軌道によるσ結合およびそれに垂直なp軌道によるπ結合を形成することが知られている。エネルギー選択幅1eVとしてそれぞれC-K殻吸収端およびB-K殻吸収端を含むエネルギー損失でエネルギー選択非弾性散乱図形を取得し、それらの定量解析から部分EELSスペクトルを取得することができた。このスペクトルは電子状態計算から得られた部分状態密度と大変よい一致を示した。この結果、本手法が部分状態密度解析法として有効であることが確かめられた。①NdSrMnOのMn-L殻励起をともなう非弾性散乱図形を取得し、従来報告されてきたCE型だけでなく、CE型と矛盾する非弾性散乱図形が観察された。この結果は試料中にドメイン構造等の不均一性の存在を示唆している。②収束電子回折をもちいた空間群決定を行い、NdSrMnOの空間群がPmnmであると決定した。この空間群決定の結果をもとに配向秩序のモデルを検討した。③Sm系Mn酸化物を作製し、制限視野電子回折法および収束電子回折法をもちいて、単位胞が2√2a×√2a×4a倍の超格子構造を形成していること、点群および空間群がそれぞれmmmおよびPnamに属することを見出した。ただし、非弾性散乱図形には明瞭な異方性が観察されたなかった。
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Research Products
(4 results)