2012 Fiscal Year Research-status Report
微小重力下の磁気誘導運動に基づく単一粒子の磁化およびその異方性の検出
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23654123
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
植田 千秋 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50176591)
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Keywords | 磁化測定 / 室内型微小重力発生装置 / 磁気放出 / 磁気異方性 / 物質同定 |
Research Abstract |
1)粒子ホルダーの設計・製作 サブミリサイズの試料を対象とした既存の試料台は,μG開始直後に磁場中心付近から磁場外へ,鉛直下向きに高速で引き抜かれることにより,試料開放時の試料初速度を最小限に抑制する.本研究では試料サイズの減少に伴い、試料および試料台の帯電による斥力を除去する方法を確立する必要がある。その一環として、試料開放時の初速度の分散を抑制するホルダーを開発した。製作したホルダーをμG実験に導入し、その結果に基づき改良を繰り返し、必要な性能を達成した。 2)常磁性試料に関しては、これまでの研究で、必要とする測定性能をほぼ達成している。すなわち、エンスタタイト、フォルステライト、方解石など磁化率が異なる物質を、単調減少する磁場中に開放しその運動を観察した。その加速度から磁化率を算出した結果、文献値とよい一致を示した。キュリー則に基づく計算によると、この並進運動には顕著ない温度変化が期待される1.0~60x10-7emu/gの範囲内にあり 質量非依存の特性が物質一般に成り立つことが確認された。申請者は、常磁性を有する粒子についても、磁場ゼロの点から磁場中心への運動を観測することで、それらの磁化率を検出することに成功した。即ちμG中の運動を観測することにより、固体全体の磁化測定およびそれに基づく物質同定が可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一般に磁化測定法でμサイズの単一粒子の磁化曲線を得ることは、1)試料ホルダーからの妨害信号、2)試料質量mの計測が困難、の2つの竜により難しいとされてきた。本研究の測定法では、微小重力(μG)条件下の希薄媒体の中に浮遊した単一の粒子に、磁場勾配力による並進運動を誘導する。そして任意の試料位置での試料速度v(x)と磁場B(x)の関係から、磁化曲線を得る新規の原理を確立する。上記の運動では、粒子の磁気的エネルギーと運動エネルギーの保存則に従うなら、並進運動の終端速度は与えられた勾配の中で質量に依存せず、物質固有の磁化Mのみに依存する。そこで研究機関内に強磁性、常磁性および反磁性体で、その磁場勾配運動をφ20μm~5㎜のサイズ範囲で観測しmの非依存性を検証する。上記の結果に基づき、固定全体をカバーする物質同定を、非破壊かつ簡便に実行する手法を確立する。本研究では試行錯誤のμG実験を繰り返す必要があるため、簡易μG発生装置を基盤とした測定システムを構築する。
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Strategy for Future Research Activity |
データの取得 これまでの観測結果から試算すると,小さいχDIA文献値を有するInの場合でも、0.6秒間で約2cmの飛行が見込まれる(ただし磁場中心強度~0.7T)。従って予備実験での装置規格を大きく変更することなく、ほぼ全ての物質種についてχDIA測定が可能と予想される。は物質固有の終端速度を得て並進し、物質種ごとの分離が実現する. 試料の運動は2台のHVカメラで観測し、その結果から粒子毎のχDIAを決定する。反磁性試料に関しては、これまでの研究で、必要とする測定性能をほぼ達成している。すなわち、黒鉛、コランダム、方解石などχDIAが異なる物質を、単調減少する磁場中に開放しその運動を観察した。その加速度からχDIA 値を算出した結果、文献値とよい一致を示した。パスカル則に基づく計算によると、ほぼ全ての反磁性体のχDIA は図示された1.0~60x10-7emu/gの範囲内にあり1)の特性が物質一般に成り立つことが確認された。申請者は、常磁性を有する粒子についても、磁場ゼロの点から磁場中心への運動を観測することで、それらの磁化率を検出することに成功した。即ちμG中の運動を観測することにより、固体全体の磁化測定およびそれに基づく物質同定が可能である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の未使用額について: 研究目的を達成する為に設計・開発した装置の一部に、運営交付金で開発した別目的の装置を転用することができた。このため、当初の計画を変更して、本研究費の予算を人件費のみに当てることとした。本年度未使用分は、来年度、人件費および研究成果発表のための旅費に充てる予定である。
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