2012 Fiscal Year Research-status Report
カルシウムイオン駆動収縮性蛋白質の結晶融解仮説の検証のためのcDNA作製
Project/Area Number |
23654153
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
浅井 博 早稲田大学, その他部局等, 名誉教授 (70063584)
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Keywords | 生物物理 |
Research Abstract |
1)琵琶湖湖畔の巨大ズーサム二ウムを持つツリガネムシ種の採集は本年度の雨季の分の採集を含めて、ほぼ終局を迎える状況になった(ただし、スパコネクチン蛋白質の抽出・精製は、一回の試験のみの量であるので慎重を要する)。 2)試験的なテストを含めてのカルケシウムを用いる研究は、大麦若葉を餌として用いると、大量培養・大量採集が可能であることが分かったが、この原生動物の種をみつけることにはまだ成功していない。東京を含む関東一円の下水処理場では、絶望的である。曝気槽や沈殿槽が屋内に在って、藻類を含む植物の生長が困難であるからである。また、流出壁が銅版でできているうえに、毎日のように壁を洗浄するから、カルケシウムが固着生長しない。本年中には、大雨の後に発生するので、大量培養用の種を見つけたい。 3)カルケシウムの大量培養を成功させたい。各地で採集されるツリガネムシを含む原生動物の種の同定のためのRNA遺伝子解析のために、純粋エタノール漬けツリガネムシ採集を始めた。ツリガネムシを中心とした生物多様性の研究テーマである。 4)デスクワークによるツリガネムシ収縮機構の研究はかなり進んでいる。毎年のように、原生動物学会と生体運動総合研究班会議で発表している。非平衡の物理の湯川記念ホールにおける研究会でも、原生動物および周辺物理現象の研究発表を毎年続けている。その一部は、誰か若い人が興味を持って研究に参加することを期待しての研究アイデアの発表である。言わば、白鳥の歌のつもりである。 5)ツリガネムシと同じCa2+収縮性の微細繊維は真核多細胞動物にもあるはずである。そこで、牛の血液の赤血球のCa2+依存性形状変化の研究を所属する朝日研院生の石川君が初めてくれることになった。まだ、研究条件の探索中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)本申請の採択以前には、約1リットルのグリセリン処理カルケシウムが保存してあるはずであったが、となりの研究室の院生が無断で廃棄してしまったと推定される。そのために、本申請書に直接に係る研究テーマの推進は、大はばに遅れる(約2年分)こことなってしまった。時間つなぎのために、間接的だが重要な研究テーマにスイッチせざるをえなかった。したがって、本研究に直接かかわる研究の達成度は30%と推定される。間接的な実験研究テーマとデスクワーク的なテーマをあわせると、約50%といったところであろう。合計での研究達成度は、80%とみる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)少量のツリガネムシでも出来る研究テーマを積極的に推進する方向に研究方策を多少変更する。すなわち、ランタニド金属(3価の陽イオン)を含む種々の金属イオンによる研究を巨大ズーサム二ウムについて行う予定である。孤立型ツリガネムシでは分析できなかったことが巨大型ツリガネムシのズーサム二ウムで分析可能であるからである。巨大ズーサム二ウムのCa2+結合たんぱく質のスパズミンは、AとBの2種類のスパズミンのみで構成されているし、2ヶ所のみのCa2+結合部位を持っているので、スパズミンからスパコネクチンへのエネルギー伝達の機構解析が可能である。このようなたんぱく質間またはタンパク質内のエネルギー転移の研究は、前代未聞のものである。 2)大量入手・大量の抽出と精製が可能な牛赤血球膜からスパズモネーム様のCa2+駆動収縮性繊維の探索を行う。 3)勿論、申請の研究テーマは研究条件がととのえば、優先的に実行する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)5月から7月末日までの3ケ月間、琵琶湖の巨大ツリガネムシの採集を行う。梅雨時には、朝日研究室の大学院生の石川君を同伴する。それらの交通費を申請する。 2)8月に青森県酸ゲ根温泉地帯での高温順応型のツリガネムシ(孤立型)を探索し、培養する。通常のツリガネムシの収縮器官は35°Cで変性してしまうが、高温順応型のツリガネムシでは、高温耐性である可能性が高いからである。さらに、8月の雨上がりの時期に長野県北志賀高原の湿原での緑ツリガネムシの採集を試みる。この種は、クロレラを共生しており、長期安定培養が可能な上に、柄(ストーク)が極めて長いので、伸長vs.張力測定の研究に最適の可能性が高い。同行者は未定。 3)浅井は、10月末から翌年の1月の間に、ニュージーランドに出張し、巨大ツリガネムシ(ズーサム二ウム種)とカルケシウム種の探索にでかける。ニュージーランドは日本と似て森と水源に恵まれているので、原生動物の研究の宝庫と期待する。その目的のための交通費と滞在費の補助を必要とする。 4)伸長vs.張力測定のためのエリアディテクター(浜松ホトニックス製)と ガラスキャピラリー作成装置(成茂科学株式会社製)を購入する。多分、 どちらも、約100万円。
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