2011 Fiscal Year Research-status Report
宇宙線による雲核生成と気候への影響に関する検証実験
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23654166
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
増田 公明 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 准教授 (40173744)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 宇宙線 / 雲核生成 / 太陽活動 / 地球気候 / 大気電離 |
Research Abstract |
宇宙線と大気の反応を室内実験で再現するために,大気反応装置を整備した。反応装置は,混合気体を入れる密閉可能な反応容器,人工空気に微量気体を精度よく混合して疑似大気を生成するガス混合純化装置,反応容器内に生成したイオンの密度を測定するイオン検出器やエアロゾル粒子計数器などの測定器から成る。大気微量成分としては二酸化硫黄(SO2),水蒸気,オゾンを加えた。SO2は酸素,水と反応して硫酸エアロゾルを形成する。オゾンは紫外線照射により活性酸素を生成し,硫酸分子の生成に寄与する。水分子はOH基の供給源であると共に,硫酸分子と結合してクラスターを成長させ,エアロゾル粒子や雲核を生成する。今年度は,疑似大気生成装置,イオン検出器等を整備し,既存の装置と合わせて動作試験を行ったのち,実験室において種々の条件の下でエアロゾル生成率を測定した。大気成分の条件パラメータは,水蒸気量(湿度),二酸化硫黄(SO2)濃度,オゾン濃度であり,これに紫外線照射と放射線照射の有無による違いを測定した。放射線源として比較的強度の弱いベータ線源を用いた。反応容器として,プロトタイプの結果を踏まえ、移動可能で大型の金属製チェンバーを製作した。その結果、実際の大気環境に近い状況でイオン密度の増加に伴いエアロゾル密度が増加することが確認できたが、高イオン密度ではエアロゾル生成が飽和傾向を示した。また、この実験結果の再現性が誤差の範囲内で一致することを確かめた。これにより、本研究で製作した大型金属チェンバーはイオン密度とエアロゾル密度の相関関係を調べるうえで十分な性能を有していることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は装置を整備し,予想通りに運転できることを確認するのが目的であった。その目的が概ね達成された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,宇宙線に見立てた放射線の種類などの条件を変えて,大気反応実験を行う。外部の施設を利用するため,移動可能な範囲である程度の大きさをもつ反応容器を製作したが,測定器類と合わせて,やや機動性に欠ける。効率よく移動等ができる手段を,人的資源も含めて考える必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は宇宙線に見立てた放射線として,加速器のビーム等による様々な種類の放射線を使用する。そのための装置の製作と旅費に使用する。
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Research Products
(5 results)