2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23654177
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 一佳 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80251411)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高尾 敏文 大阪大学, たんぱく質研究所, 教授 (10197048)
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Keywords | 化石タンパク質 / 分子化石 / 腕足動物 / 分子古生物学 / 結晶内タンパク質 / 分子進化学 / 質量分析 / アミノ酸ラセミ化 |
Research Abstract |
本年度は、腕足動物の現生種の殻体タンパク質の研究を中心に行った。相模湾において採集されたホオズキチョウチンガイLaqueus rubellusの殻体を脱灰し、脱塩濃縮した後、SDS-PAGE電気泳動法により粗抽出物を展開した。その結果、本種には7つの主要な殻体結晶内タンパク質が存在することを確認した。さらに、殻体抽出物をLC/MS/MSにより質量分析を行うことで、本種殻体のプロテオーム(タンパク質の網羅的データ)を得ることに成功した。そのうちのいくつかの主要なタンパク質をデータベース検索したところ、いずれも新規のタンパク質であることが分かった。これらのタンパク質の同定をさらに正確に行うため、殻体をつくる組織である外套膜のトランスクリプトーム解析を試みたが、必要量のRNAを得ることができなかったため、現在生体個体の追加標本の採集を計画中である。また、化石殻体中に残された化石ペプチドの予察的解析も行った。房総半島の下総層群地蔵堂層から採集されたLaqueus rubellusの殻体を脱灰し、粗抽出物を得た。これらの抽出物をアミノ酸ラセミ化分析および質量分析によるアミノ酸配列解析に供した。その結果、2つの化石ペプチドについて、アミノ酸配列を決定することができた。現生種のトランスクリプトーム解析を進め、データベースを得ることで、今後さらに化石ペプチドの同定を進めるとともに、別の層準から得られた同種の化石殻体の分析を進めることで、分子進化プロセスに関する知見を直接化石から得たい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
所期の計画通りに現生種の殻体のプロテオームデータが得られたほか、化石種についても化石ペプチドの保存を強く示唆する結果を得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はプロテオームデータ、化石ペプチドの配列データの解釈において決定的に重要な影響を及ぼす現生種の外套膜トランスクリプトームデータの取得を優先課題として取り組む。さらに、化石ペプチドの分析を進め、分子進化だけでなく、分子の続成(特に断片化、ラセミ化と化石年代との相関)についても研究を進める。またLaqueus rubellus以外の種についても分析を行う計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主として分析のための消耗品のために使用する。
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Research Products
(2 results)