2011 Fiscal Year Research-status Report
正負イオン衝突による再結合反応を用いた、星間塵の生成に関する実験的研究
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23654195
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
岩本 賢一 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00295734)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 再結合反応 / イオン分子反応 / 低温反応 / 移動管 / 質量分析 |
Research Abstract |
星間物質の組成や存在量などの情報は分光観測によって得られている。多くの観測結果から、星間物質は気相中に存在する星間分子と星間塵に大きく分けられる。星間塵は無機物質(アモルファス氷やシリケートなど)や多環芳香族炭化水素(PAH)などで構成されていると考えられている。しかしながら、観測結果と実験室で得られたPAHの赤外吸収スペクトルは必ずしも一致していない。これは、星間空間のPAHは、単一の物質ではなく、構造変化をしていることが示唆されている。星間空間のような低温領域でのPAHの生成過程や構造は明らかにされていない。正負イオンの再結合反応は星間塵の生成過程として重要であると考えられるが、イオン分子反応や原子ラジカル反応の研究に比べて、その報告例は非常に少ない。本課題では、正負イオンの再結合反応を観測するための新たな移動管装置を開発し、低温領域でのPAHの生成過程を研究することを目的としている。今年度の成果として、全く新しい、イオンを長時間蓄積できる移動管を考案した。従来の移動管は、移動時にイオンが拡散してしまうため、衝突効率が低下する問題点がある。そこで、イオンの発散を抑えた移動管を新たに考案した。イオンの広がりはイオン軌道シミュレーションにより、2mm程度に抑えられた。これは従来の移動管の1/10程度となっている。また、この新規な移動管はイオンの蓄積も可能であるため、衝突するイオン量を飛躍的に向上させることが期待できる。負イオンのイオン源として、イオンの解離が抑制できるバリア放電イオン源を作製した。イオン化部の表面温度が室温程度であることを確かめた。正イオン負イオン再結合反応を測定するための新しい装置技術を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
正負イオンを両端から高い効率で打ち込むことが可能となる新しい移動管を考案した。この移動管はイオンの発散を防ぎ、イオンの蓄積も可能である。これらの設計に時間を要したため実施が遅れている。新規な移動管を利用することで、従来の計画より衝突効率の向上が期待でき、測定時間の大幅な短縮が可能となる。また、大気圧イオン源としてバリア放電イオン源を新たに開発した。これにより、解離が抑制されたイオンの生成が可能となる。
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Strategy for Future Research Activity |
正と負の両イオンを新規な移動管に打ち込み、衝突実験を行う。新規な移動管を利用することで、従来の計画より衝突効率の向上が期待でき、中性化の詳細な情報取得が期待される。昨年度に開発した装置を組み合わせ、装置開発を完了し、正イオンと芳香族炭化水素負イオンによる再結合反応を観測する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
新規な移動管の作製、性能検証を行う。移動管内部のイオン蓄積用電源とパルス制御系を作製する。負イオンは大気圧下で生成させるため、イオン透過効率の高い差動排気系を作製する。これらの装置を組み合わせることで、正イオン負イオン再結合反応を観測するための新規移動管装置を完成させる。
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