2012 Fiscal Year Research-status Report
低温プラズマ・ラジカル誘導炭酸ガス還元法による低次有機化合物合成の基礎過程
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23654198
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
飯塚 哲 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20151227)
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Keywords | 炭酸ガス還元 / ラジカル / 低温プラズマ / メタン / メタノール / CO2削減 / インパルス放電 / 重合反応 |
Research Abstract |
二酸化炭素をメタンやメタノールなどの低次有機化合物に変換するための還元剤としてH2もしくは水蒸気H2Oを用いる実験を行い,還元の基礎過程を明らかにした.低圧矩形波パルス放電を用いて二酸化炭素のメタンへの変換を行い,メタンへの変換が確認された.また今回の実験から以下のことが明らかになった. 1.CO2と水素の流量比は1:4程度になるとメタンが生成された.またH2の流量が増えるにつれてCOの生成量が減少した.ほぼ、CO2 + 4H2 ⇒ CH4 + 2H2O の反応に対応すると考えられる. 2.放電距離に対しては大きく依存することは無く,印加電圧を上昇させた場合,CO2分解率αが向上した.これは陰極降下部の電子加速による解離が大きく寄与していると考えられる. 3.二酸化炭素の分解率の最大値αmaxは約35% ,また、生成物中の含有炭素化合物のうちメタンの占める割合であるメタン選択率の最大βmaxは約44%で,αは圧力が高いとき,βはCO2が低流量のときに得られた.α,βは特にCO2の流量が1~5[sccm] かつ,H2流量がその4倍以上であるときに最適値となった. 4.入力放電電力に対するメタンの生成をエネルギー効率γとするとき、γはCO2/H2 = 10/40[sccm],かつ放電距離 5[mm],印加電圧1.57[kV],圧力 90[Torr]のときγ≒1.26[L/kWh] となった.これは大気圧DBDよりも大きな数値となっていることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二酸化炭素の分解率やメタンの選択比を決めている放電パラメータが明らかになってきた.また、エネルギー効率を決めている放電の構造も明らかになってきた。これらの結果は今年度の実験を通して明らかにされたものであり,今後の研究の指針を与えるものである. CO2/メタン流量比に関しては、CO2と水素の流量比は1:4程度になるとメタンが生成された.またH2の流量が増えるにつれてCOの生成量が減少した.これは、ほぼ、CO2 + 4H2 ⇒ CH4 + 2H2O の反応に対応することが分かった. 放電距離に対しては,二酸化炭素の分解率,メタンの選択率,エネルギー効率などが大きく依存しないことから,放電の長さよりも,陰極降下部のシース電界が重要であることが分かった.印加電圧を上昇させた場合,CO2分解率αが向上した.これも同様に陰極降下部の電子加速による解離が大きく寄与していると考えられる. また,エネルギー効率の上昇には放電の形態が大きく寄与していることが分かった.陰極降下部におけるイオンのボンバードメントは、エネルギー損失に重大な機構である.磁場を用いて陰極降下の電位を低減化するための改良が重要と考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
CO2分解率αの改善について,αはこれまでの実験で明らかにされたように,CO2単位モルに投入する電力,特に放電電流を大きくすることで向上すると考えられる.これにより,二酸化炭素を分解する時に,使われるエネルギーが電子から供給されている可能性が高いことを示していると考える.これにより、低電圧で放電電流を大きくする装置の作成が鍵となる. メタン選択率βの向上に関しては,理論式CO2 + 4H2 ⇒ CH4 + 2H2O の反応を起こさせるための混合比が重要であると考えられる.またメタンの選択率上昇には副生成物であるCOの生成を押さえることが必要になっている.しかし,COは中間生成物であるため,これをおさえることは全体の収量減少にもつながるので,むしろCOの生成を抑えるのではなく,COを生成した後,さらにCOの強固な結合をいかに効率よく切断できるかが今後の課題となっている.この方法として,予めCOにした後に,さらに密度の濃いプラズマにもう一度さらすことが必要だと考える. エネルギー効率γの向上湯については,γがα,βの向上と相反する場合が多いことから,これは,CO2,COを分解するために大きなエネルギーが必要であるのに対して,投入エネルギーを大きくすると分解以外での,発光や放熱による電力ロスが大きくなるためであると考えられる.今後は,分解以外にあまり電力ロスが生じないような放電構造を製作することが重要と考える.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまでの実験と同様に,放電電極などの改造や更新に必要な電気電子材料,電子部品の購入が必要である.また,二酸化炭素や水ガス素など放電のための消耗品経費に使用する.成果の発表や他研究機関の情報を収集するために国内外の学会に積極的に参加する必要がある.このための参加費や旅費として使用する.実験の補助者に対する経費として,データ整理や実験補助に必要な謝金にも予定している.
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Research Products
(9 results)