2012 Fiscal Year Research-status Report
液滴ジェットプラズマによる熱脆弱フラーレン配列制御への挑戦
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23654199
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
金子 俊郎 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30312599)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
李 永峰 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40400296)
畠山 力三 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (00108474)
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Keywords | ジェットプラズマ / 内包フラーレン / ナノチューブ / DNA / イオン照射 |
Research Abstract |
量子コンピュータ素子として注目を集めている窒素原子内包フラーレン(N@C60)のナノメートルオーダーの配列制御を実現することを目的として,2年目となる本年度は,N@C60をカーボンナノチューブ(CNT)に内包させる手法として,前年度に作製した液滴ジェットプラズマ装置を用いて,実際にCNTへのフラーレンの挿入実験を行った. 1. これまでに,トルエン中に空のフラーレンC60を導入し,液滴ジェットプラズマを用いて,大気中で浮遊電位の基板へ照射することによって,基板にC60が堆積することが明らかになっている.この基板上にCNTを塗布し,基板に対して正電位および負電位を印加することによって,C60イオンのCNTへの照射を行った. 2. C60含有プラズマジェットを照射したCNTの表面に付着した余分なC60を超音波洗浄で除去後に,ラマン分光分析を行ったところ,基板バイアスがVCNT=+20Vの場合にはC60の存在を示すAg(2)モードのピークが存在し,一方,VCNT=-60Vの場合には,Ag(2)モードのピークが観測されないことが明らかとなった. 3. ラングミュアプローブを用いて,液滴ジェットプラズマの浮遊電位を測定したところ,-20V程度であることが分かった.これらの結果から,液滴ジェットプラズマ中ではC60が負イオン化し, 正電位を印加した基板上のCNTに加速されて照射されることで,CNT内部にC60が挿入されたと考えられる. 4. トルエン中に純度を10%に濃縮したN@C60(90%は空のC60)を導入し,C60の場合と同様にCNTへの照射実験を行った.N@C60含有プラズマジェットを照射したCNTのラマン分光分析を行ったところ,N@C60を含むC60の存在を示すAg(2)モードのピークを観測することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに,液滴ジェットプラズマ装置を作製し,フラーレンC60および窒素原子内包フラーレンN@C60をカーボンナノチューブ内に挿入することに成功しているため.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,カーボンナノチューブ内部に挿入された窒素原子内包フラーレンを定量分析するために,電子スピン共鳴を用いた測定を行う.これまでの結果から,カーボンナノチューブ内に挿入されたフラーレンの密度が少ないことが予想されるため,密度増加を目的として,基板上に配向させたカーボンナノチューブを利用するなどの対策を講じる. また,カーボンナノチューブ内でのフラーレン間隔を制御するため,DNAを用いたフラーレン複合物質を形成し,それをカーボンナノチューブに挿入する実験を行う. 以上の実験により形成された,間隔制御された窒素原子内包フラーレン配列を用いて,隣接する窒素原子間のスピン相互作用等を観測し,量子デバイスとしての応用可能性を評価する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は,今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり,平成25度請求額とあわせ,次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である.なお,未使用額には,今年度の3月までに納品したが,4月に支払われる物品の金額も含まれている.
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