2011 Fiscal Year Research-status Report
紫外共鳴ラマン分光法を用いた生細胞中タンパク質の選択的観測法の開発
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23655012
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
水谷 泰久 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60270469)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 共鳴ラマン分光法 / in-vivo測定 / タンパク質構造 |
Research Abstract |
1.高粘性の懸濁試料用のプローシステムの開発 ラマン散乱の励起に用いる紫外光はタンパク質試料に損傷を起こしやすい。そのため、測定試料はフローさせ、常にフレッシュな試料に紫外光が当たるようにする必要がある。そこで、粘性の高い試料溶液であっても安定な液膜ができるよう、ノズルの内径や断面の形状を最適化した。2.迷光低減のためのフィルター分光器の高性能化 高濃度の懸濁細胞溶液は紫外光の波長レベルで不均一性が存在する。このような試料ではレーリー散乱光が強く、低振動数領域のスペクトル測定が困難である。低振動数領域のスペクトルにはタンパク質の構造解析に重要なラマンバンドが多く観測されるため、その測定は必須である。そこで迷光をできるだけ抑え、かつ高感度の測定ができるよう、現有のフィルター分光器を改良した。また、主分光器内にも細かく仕切りを設けることで、低迷光で低振動数領域の測定が培養細胞に対して行えるようにした。3.高い生産効率をもつベクターを活用した培養細胞の調製 生細胞中のタンパク質の濃度を上げることができれば、そのスペクトルを観測しやすくなる。コールドショック遺伝子を利用しタンパク質発現システムを用いることによって、宿主細胞由来タンパク質の合成を抑制し、目的タンパク質のみを高効率で得ることを試みた。現段階では、効率の大幅な向上にはまだ至っていないが、培養条件の検討を引き続き行っている。上記、1および2の達成によって、観測システムの性能は当初計画していたレベルに達したといえる。今後は、細胞内における目的タンパク質の濃度を上げることによって、生細胞中でのタンパク質の共鳴ラマンスペクトル測定を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の主な目標としていた観測システムの高性能化は、試料部と検出部ともに達成できた。そのおかげで生細胞の測定は再現性良く行えるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
観測システムの性能は当初目標としていたレベルに達したので、今後は細胞内における目的タンパク質の濃度を上げることによって、生細胞中でのタンパク質の反応観測を目指す。研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題点は特にない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
生細胞中タンパク質観測の検証実験 平成23年度に整備した測定系を用いて、生きた細胞中のタンパク質の紫外共鳴ラマンスペクトル測定を行う。まず、目的タンパク質が観測されているかどうかを検証するために、以下の2つの実験を行う。(a)細胞中で発現させるタンパク質の種類を変え、観測される紫外共鳴ラマンスペクトルがそれに応じて変化するかを調べる(b)細胞中で発現させるタンパク質の量を変え、観測される紫外共鳴ラマンスペクトルの強度がそれに応じて変化するかを調べるこれらの検証実験により、目的タンパク質が観測されていることが確認されれば、次に生細胞のスペクトルと細胞から単離・精製したタンパク質のスペクトルとを比較する。スペクトルの違いをもとに、細胞内の環境がタンパク質の構造、タンパク質間相互作用、動態にどのような影響を与えているかを明らかにする。
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