2011 Fiscal Year Research-status Report
人工核酸を活用した自己複製・自己増殖能を有する機能材料創製
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23655096
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
和田 健彦 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (20220957)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ナノバイオ / ケミカルバイオロジー / 自己増殖 / 人工PCR / クリックケミストリー / 自己複製 / 人工核酸 / 分子認識 |
Research Abstract |
本研究で提案する、従来にはない人工核酸を活用した自己複製・増幅システムを検討する場合、二官能性モノマーを用いた機能性分子やオリゴマー合成における本質的副反応である"自己反応によるポリマーや環状化合物生成"を抑制する必要がある。本研究では、我々が報告してきたモノマーにおいてさえ高い塩基配列認識性とテンプレート鎖への結合特性を有するペプチドリボ核酸(PRNA)やペプチド核酸(PNA)モノマーの活用している。 具体的には1.アジド基を有するヌクレオシド誘導体を用いた自己複製系の構築、2.アジド基とアセチレン基を両末端に有する新規ペプチドリボ核酸・ペプチド核酸系での自己複製・増幅反応の検討、3.天然DNA/RNA類似構造を有する自己複製・増幅系の構築、の3項目を論理的にかつ効率的に推進する。本年度は、まずターゲット鎖に対して高い認識性・結合特性を有し、モノマーの自己会合・自己反応を抑制する低モノマー濃度条件下でも反応進行が期待される、ヌクレオシドの5'位にアジド基を導入した新規PRNAモノマーの設計・合成を検討した。まず、テンプレート鎖に相補的なPRNAオリゴマーの一塩基として、アセチレンを有するモノマーを導入し、主鎖にアセチレン部を有するクリックケミストリー適用オリゴマーの設計・合成を検討した。当初モノマー構造としては5’位にアジド基を、3’位にエチニル基の導入を検討した。しかし、このモノマーと相補的テンプレート鎖間ではほとんど相互作用が観測されなかった。この結果を踏まえ、ペプチド主鎖を用い、側鎖にエチニル基を導入した新規モノマー系を設計・合成を検討した。この系では相補的テンプレートとの相互作用が観測されることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、従来にはない人工核酸を活用した自己複製・増幅システムを検討する挑戦的研究であり、試行錯誤を伴うことは十分に予想された。実際、当初設計・計画していたモノマーを合成したが、自己増殖系にとって必要不可欠な認識機能に関し十分な特性を有してはいなかった。そのため、新規分子設計を検討し、新規モノマーを合成し、その特性を検討した結果、自己増殖系に求められる特性を有している可能性を見出した。このように当初計画通り実験が進行しない場合でも、目的を達成するため新規分子系を設計・合成し、挑戦する姿勢は萌芽研究として重要だと考えられ、順調に進展していると認められる。
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Strategy for Future Research Activity |
新規モノマーに相補的なテンプレート鎖を加え、主鎖にアセチレン部を有するクリックケミストリー適用オリゴマーを合成する。このオリゴマーと相補的テンプレート鎖共存下、アジド基を末端に有するヌクレオシド誘導体モノマーを添加し、相補的塩基対を形成させた後、銅触媒を添加し、クリックケミストリーにより相補的ヌクレオシド誘導体が導入されたオリゴマー合成を検証する。アジド基を有するヌクレオシド誘導体の塩基配列特異性については隣接する塩基対の安定性が大きく影響する可能性が高いため、テンプレート鎖の塩基配列が導入塩基対におよぼす影響についても詳細に検討する。本系を用いて、クリックケミストリー進行と正確な塩基対形成相補を兼ね備えた実験条件の最適化を進める。この結果を基に、アジド基とアセチレン基を両末端に有する新規ペプチドリボ核酸・ペプチド核酸系での自己複製・増幅反応の検討アジド基を有するヌクレオシド誘導体を用いた研究の知見を踏まえ、実際に自己複製・増幅可能なシステム構築に取組む。具体的には、アジド基とアセチレン基を両末端に有する新規ペプチドリボ核酸(PRNA)誘導体を用い、テンプレート存在下でのオリゴマー生成を検討し、複製能について確認する。本研究項目に用いるモノマ-は、RNAとの塩基選択的安定錯体形成能を有するPRNAモノマ-を基本骨格とするため、モノマーレベルでも高い塩基配列認識・会合形成能を有することが十分期待されRNAをテンプレートとするクリックケミストリー合成条件最適化の後、テンプレートとしてPRNAおよびPNAを用い、自己複製系について検討し、自己増幅システムの構築に繋げていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の研究を効率的に推進したことにより発生した未使用額であり、平成24年度請求額とあわせ、目標達成に向かい、人工核酸合成用試薬やカスタムDNA・RNAの購入など、効率よく計画している研究の推敲に使用する予定である。
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