2012 Fiscal Year Annual Research Report
有機導体-金属錯体ハイブリッド化合物による分子スピントロニクス
Project/Area Number |
23655114
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
西川 浩之 茨城大学, 理学部, 教授 (40264585)
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Keywords | 分子性導体 / 常磁性金属錯体 / デバイス / スピントロニクス / 自己組織化 / 酸化還元特性 / 伝導性 / 磁性 |
Research Abstract |
本研究課題では、次世代スピントロニクス材料の探索を目的とし、分子性導体の主要構成分子であるTTF誘導体を配位子に有する常磁性金属錯体を作製し、結晶構造や電気物性などの基礎的性質を明らかにするとともに、真空蒸着法などによる薄膜化を試み、スピンが関与する電子デバイスの開発を試みた。TTF誘導体がシッフ塩基配位子を通して常磁性のCu(II)イオンに配位した錯体を新規に合成し、その構造ならびに電気化学的性質を明らかにした。この錯体は中性錯体で、構造解析から配位子内のTTF部位間に横方向の相互作用が存在していることを明らかにした。このことはTTF間の相互作用を通じた伝導性が期待される。また、この錯体の部分酸化塩が電気伝導性を有することを見出した。 この錯体を用いて、表面処理したガラス基板上に真空蒸着法したところ、銅錯体は分解せず蒸着されていることを確認した。そこで、n型シリコンにSiO2を蒸着した電界効果型トランジスタ(FET)用基板上に銅錯体、および金電極を真空蒸着することによって、FETデバイスを作製した。FET特性を評価したところ、残念ながらFET特性を観測することができなかった。このことは薄膜中では、単結晶と異なり配位子中のTTF間の相互作用が弱いためと考えられる。そこで、分子間相互作用の増大を目指してTTFの末端の置換基をより平面性の高いベンゼン環に置換した錯体および長鎖アルキル基で置換した錯体の合成を新たに行った。現在、これら新規錯体の結晶構造および基礎物性の測定を引き続き行っている。また真空蒸着法以外の薄膜化として、キャスト法やスピンコート法などのウェットプロセスを検討するため、自己組織化能を有する錯体の作製も試みた。その結果、有機溶媒中でゲル化する長鎖アルキル置換TTFを配位子に持つキューブ錯体の合成に成功した。今後これら錯体を用いてFETデバイス作製と評価を行う。
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Research Products
(9 results)