2011 Fiscal Year Research-status Report
原子間力顕微鏡を用いた光吸収顕微分光法のフィージビリティ検証
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23656027
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
影島 賢巳 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (90251355)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 康二 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10107443)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 光吸収 / 原子間力顕微鏡 / 分極力 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ナノメータースケールの物質同定に資する新しい顕微分光法として、原子間力顕微鏡に、光吸収による分極力検出を組み込んで、空間分解能力を持つ新奇な分光法のアイデアを実現させ、その原理的な有効性を実証することである。今年度は、計画の前半と位置づけ、以下の2つの課題に取り組んだ。(1)暗条件で高感度に力検出可能な、水晶振動子を力センサーとする原子間力顕微鏡機能を、研究分担者が現有していた超高真空式の走査トンネル顕微鏡装置に組み込むため、装置本体の最適化、センサーマウント部分の新規製作などを行った。その結果、同装置に装着可能な形での水晶振動子センサー部分の設計がほぼ完成した。一般に水晶振動子を外部からの信号によって励振する方式には方式には電気的励振と機械的励振の両方が可能である。両者では励振できる振動モードの形の詳細や感度において差異があることが指摘されており、それぞれ一長一短がある。そこで、両方の方式を可能にするべく、機械的励振用の圧電素子を組み込んだ形の水晶振動子ホルダーを設計した。(2)近赤外光を、真空外から真空内へ導入し、探針先端部分にのみ集光して照射できる光学系の設計・製作に取り組んだ。実際の水晶振動子センサー及びその探針部分の取り付けにはミリメートルオーダーの公差が見込まれるため、光学系には集光位置を3次元的に調整する機能を備える必要がある。この複雑な作業を、光路中の真空外に位置する部分のみの操作によって容易に実現できることを目標として光学系の設計を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
開始当初の計画では、23年度中に水晶振動子式AFMの動作を確認するところまでを実現する予定であった。しかし、計測のベースとなる超高真空STM装置の状況確認や、これと整合性ある振動子センサー搭載方式などの検討に時間を要し、また、研究代表者の異動に伴って装置の解体・移設などの必要が生じたため、目標の時点までは到達していない。この点で、現時点までの達成度は「やや遅れている」と自己評価する。平成24年5月には装置の移設が完了する見通しであり、その後は研究を順調に実施できると考えられるので、研究計画全体の目標達成には大きな支障とはならない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に行っていた水晶振動子方式のAFM計測と近赤外照射光学系を完成させる作業を継続して実施し、完成させる。さらに、水晶振動子の振動と同期させてレーザー光を強度変調し、かつ両者の位相差を任意に調整できる回路および機構の開発を行う予定である。また、本研究は、その有効性を実証するいわばデモンストレーション的な段階にあるため、現有している波長可変方式の近赤外レーザー光源を用いて効率的にその原理実証が可能な試料系を検討する必要がある。そのため、単層カーボンナノチューブを分散させて塗布した試料の使用を検討し、現有のソニケーターによる分散試料調整方法を検討するとともに、基板による吸収バックグラウンドの影響なども考慮して基板材質も検討する。このようにして、測定系および試料の双方の準備を完了させ、入射光波長を掃引して、特定波長で探針‐試料間の相互作用力がピークを持つかどうかを調べ、もしこれが検出できれば、これが熱膨張などの2次的な効果ではなく、吸収による分極力の変化であることを立証することを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究のベースとなる装置の改造及び新規製作部分への投資は、前年度にその大半を終了しているため、平成24年度も高額な備品の導入は計画していない。しかし、本研究は測定手法の開発研究であることから、実際の計測を行って絶えず細かい修正を装置に施す必要はある。また、実際に真空中で計測を行うために必要な真空部品、光学系の最適化に要する各種光学部品、レーザーの変調制御に必要な回路の製作に必要な電子部品などに物品費を要するほか、試料・試薬やセンサーなど経常的に消費する消耗品の費用も必要である。また、24年度は計画の最終年度として、研究成果の発表も積極的に実施する段階であるため、成果発表旅費や論文投稿料などにも支出することを予定している。
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