2011 Fiscal Year Research-status Report
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23656039
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
笹木 敬司 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (00183822)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 放射圧 / プラズモン局在場 / クーリング / 金属ナノ構造 |
Research Abstract |
金属ナノギャップ構造のプラズモン局在場において、熱運動するナノ微粒子や分子に速度依存放射圧が発生し、クーリング(冷却)効果が顕在化する現象を、世界に先駆けて理論的・実験的に解明することを目的とする。このクーリング放射圧は、ギャップモード局在プラズモンと強くカップリングした微粒子・分子がナノ空間で移動すると、局在増強場のエネルギーが急激に変化することによって発生する。 本年度は、ナノ微粒子・分子が運動する金属ナノギャップ構造における電磁場分布の時空間展開を数値計算した。ナノ微粒子・分子が運動する金属ナノギャップ構造における電磁場分布の時空間展開を数値計算し、局在プラズモン増強場のダイナミックなエネルギー変化を解析する新しいシミュレーション手法を開発した。本手法を用いて、微粒子・分子に作用する速度依存放射圧を、トラッピング放射圧と共に求め、プラズモン局在場のクーリング効果を定量的に解析した。具体的には、既存の3次元電磁場分布解析手法では構造体の複素屈折率分布を固定して設定するのに対し、運動する物体に作用する速度依存放射圧を解析するために、複素屈折率の3次元構造を時間の関数として変化させながら、電磁場の時空間展開を数値計算する新しいシミュレーション解析手法を開発した。また、微粒子・分子のサイズや分極率・複素屈折率、金属ナノ構造の形状や大きさ・ギャップ距離、照射する光の波長や強度分布等をパラメータとして数理シミュレーション解析を行い、放射圧を増強するための金属ナノ構造体の設計や最適な実験条件の探索を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
金属ナノギャップ構造のプラズモン局在場における放射圧は最近盛んに研究が成されているが、速度依存放射圧によるクーリング効果のアイデアは我々独自のものであり、全く新しい研究領域を切り拓こうとしている。そのため、シミュレーション解析の手法やプログラム等、新規に作成し性能向上を図る必要があるため、多くの時間を費やしている。かなりのエフォートをこの研究に注ぎ込むことによって、ナノ微粒子・分子が運動する金属ナノギャップ構造における電磁場分布の時空間展開を数値計算し、局在プラズモン増強場のダイナミックなエネルギー変化を解析する新しいシミュレーション手法を開発することができた。これは、大きな成果と自己評価している。ただし、クーリング効果の解析には未だ至っていないことから、「おおむね順調に進展している」との達成度と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
開発した数理シミュレーション解析手法を共振器系に適用し、ミラーに作用する速度依存放射圧を求めてクーリング効果を定量的に解析する。その結果を理論解析により見積った放射圧と比較し、放射圧冷却現象の解析に必要な電磁場の計算精度、空間・時間のサンプリング条件等を精査する。共振器系での検証に基づき、ギャップモード局在プラズモン場と強くカップリングした微粒子・分子の運動によって誘起される電場変化から放射圧冷却効果を解析する。 また、プラズモン局在場の急峻な電場勾配によるトラッピング放射圧をクーリング放射圧と共に計算し、ナノ空間における流体力学的相互作用も組み入れて、微粒子・分子の運動状態の時空間展開を精密にシミュレーション解析する。さらに、半導体ナノ微粒子や芳香族有機分子を対象として、放射圧クーリング効果、局在プラズモンとのカップリング効果、金属ナノ構造との相互作用等が、微粒子・分子の発光・吸収・散乱ダイナミクスに与える影響ついて分析し、新奇な光物理・光化学現象の探索に展開する。 電子線描画装置を用いたリソグラフィー技術により、金ナノギャップ構造体を設計に基づいて作製する。作製した金ナノギャップ構造体に半導体ナノ微粒子や温度に敏感な芳香族有機分子を含有した溶液を滴下し、顕微鏡下で試料にレーザー光を照明して局在プラズモン増強場を生成する。ナノ微粒子・分子からの発光・散乱光のスペクトルやダイナミクスを観測し、ピーク幅、波長シフト、ラマン強度、光子相関等によりクーリング効果を実証する。また、実験結果からクーリング放射圧やトラッピング放射圧を定量的に解析し、数理シミュレーションとの整合性について考察し、得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
経費の節減・効率的使用により生じた未使用額について、高性能解析コンピュータの機能向上装置の追加に使用する。
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Research Products
(11 results)