2011 Fiscal Year Research-status Report
光通信用ファイバコンポーネントを利用した周波数自由度による量子通信アーキテクチャ
Project/Area Number |
23656044
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
深津 晋 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (60199164)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 周波数重ね合わせ状態 / 光通信用ファイバコンポーネント / コムフィルタ / ブラッグレーティング / 量子通信プラットフォーム / 単一光子 / 周波数ドメイン電子回路 / Groverの量子検索アルゴリズム |
Research Abstract |
本研究では、現存のファイバ光学部品のみを利用した量子通信ハードウエアの新構想の検証を目指す。 初年度では、まず周波数基底におけるレーザー光の状態操作を試みるため、基本モジュールの精密設計と現有部品を流用したプロトタイプの構築を試みた。ターゲットは、専ら既存のシリカファイバ系光通信用部品のうち、とくにファイバブラッググレーティングを利用して、周波数多重のハードウエア群に大きな変更を加えることなく、周波数弁別機能をもつコムフィルタを構築することである。多重ストップバンドをもつ周波数コムフィルタをスペクトルの相互干渉なしに構築する上においては、C,Lバンドのブラッグレーティングの直列スプライシングが設計上も、実装においても有効であることを見いだした。一方、よりコンパクトな構成にすべく多重グレーティングの基本設計を開始し、作成可能な委託先の検討を行った。これにより周波数重ね合わせ状態の発生ならびにその操作法の検証を行う実験系の準備が整いつつある。 一方、周波数状態制御のための光学実験系の整備を行った。単一光子生成実験系としてBBO結晶にもとづく波長405nmの光の縮退パラメトリック下方変換2光子生成系を構築する一方、光子状態評価の目的で2光子同時計測系を構築した。 さらに周波数ドメインを基軸として周波数を光から電波領域にまで拡張すべく、プリント基板上における周波数ドメイン電子回路を考案し、その原理の検証実験を行った。高精度のディスクリート回路素子の組み合わせによって、アナログ回路でありながら周波数重ね合わせ状態はもとより、量子ゲートに匹敵する高い忠実度(>90%)を有する周波数ゲートを構築できた。さらにGroverの量子検索アルゴリズムが搭載可能なアナログアーキテクチャをサーキットシミュレータのレベルで実現した。これらの結果は複数の国内学会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画であったブラッググレーティングの多重化によるコムフィルタ形成では、プロトタイプ構築と相互干渉のないフィルタ形成は予定どおり進展した。しかし、周波数シフト量と既存品のバンド幅のスペックにGHzオーダの差があったため、このギャップを解消する方法論を模索するために予想以上に時間を要した。一方、当初計画から派生した重要関連項目として、周波数ドメインの拡張性を示す実験をエレクトロニクス基板上あるいはシミュレータレベルで実証し、光ファイバ構成での実証をおこなう上での準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では、予定どおりにファイバグレーティング構成で、周波数ドメイン上での論理演算と量子通信プロトコルの原理の検証実験に着手する。その際、本年度の技術課題の解決策として残った光源のコム化にも着手する予定である。量子通信プロトコルについては基本スキームを構築できており、順次、周波数ドメイン回路への搭載、実証実験に移行する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度初頭に光源側のコム化の必要性を検討する関係で、部品購入費分としてH23年度より一部繰越金が発生した。新年度に配分予定の研究費は、おもにファイバーグレーティングほか光学実験に必要な部品類の購入、学会での成果発表、学生の実験補助・データ整理への謝金などに使用する。
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