2011 Fiscal Year Research-status Report
水クラスターの構造制御による耐劣化性能に優れた高分子電解質膜の開発
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23656127
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
徳増 崇 東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (10312662)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 分子流体工学 / マルチスケール解析 / 分子動力学 / 燃料電池 / ナノスケール流れ / 拡散現象 / 化学反応 / 密度汎関数法 |
Research Abstract |
今年度は、まず高分子電解質膜を構成するNafion分子の基本要素について, DMol3による量子化学計算を行い, Nafion分子を構成する各原子の電荷および最安定構造の情報を得た. 次にこのNafion分子を計算系に複数配置し, さらにその中に水分子とオキソニウムイオンを混入して, 高分子電解質膜内部における水の構造を解析するシミュレータを構築した. 劣化種であるOHラジカルの移動にはVehicle機構だけでなくGrotthus機構をも考慮し, その機構はEmpirical Valence Bond(EVB)法を用いて取り扱った. また, そのポテンシャルは密度汎関数理論(DFT)の計算結果を再現できるように調整した. このシミュレータを用いて, まず水のクラスター構造を静的構造因子を用いて評価した. その結果, 本研究で用いたモデルはGebelの予想した水クラスター構造の周期サイズをよく表せており, モデルの妥当性が検証された. また既報の中性子小角散乱の実験により得られたデータとの比較を行ったところ, 特徴的なピークの位置が概ね一致していることが確認された. このシミュレータを用いて, 平均二乗変位を求めることにより水の拡散係数を評価し、その含水率依存性を解析した。その結果、水の拡散係数の含水率依存性は実験結果と概ね一致し、含水率が増加するにつれて拡散係数が上昇することが確認された。また、この現象の原因は, 含水率が低い時には高分子膜の親水基(SO3-)が水和殻で覆われておらず, そのため水分子が親水基の電荷からうける影響が大きいが、含水率が増加するにつれて親水基が水和殻で覆われるため、その影響が小さくなるためであることを突き止めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年はまずシミュレータの構築を達成し、その中の水クラスターの構造を評価できるところまで到達した。さらに水クラスターの構造を静的構造因子により評価し、実験結果との比較を行うことによって妥当性を検証した。これらのことから、水クラスターを正確に表現できるシミュレータが完成したと言え、研究は順調に進んでいると判断できる。また、物質の拡散にしても、水分子の拡散については十分検証もできている。ただ、OHラジカルのGrotthus機構のモデリングやそのシミュレータへの実装などにはまだ課題が残されており、次年度はこれらを取り入れたシミュレーションを行う必要があると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまずOHラジカルのGrotthus機構のモデリングを行って, 純水中でのOHラジカルの拡散係数の計算を行い、実験値と比較することによってモデルの妥当性を検証する。また、そのモデルを、昨年度までに構築されたシミュレータに組み込み、高分子電解質膜内部においてOHラジカルの輸送をシミュレートする。このシミュレータが構築された後に、系を規定する様々な特性量(温度、圧力、含水率)を変化させて水クラスターの構造を定量的に表現できる特性量(オキソニウムイオン近傍の水分子の数および配向(分子の向き), 水分子の水素結合により形成される一連のネットワーク構造の長さ, 水分子の酸素原子周りの水素原子の動径分布関数 など)の変化を観察する。これらの結果から、水クラスターの構造を表現する特性量の中で、プロトンやOHラジカルの輸送現象に大きく影響を及ぼす因子を特定する。さらには、高分子電解質膜の性質(電解質膜の親水基の分子種や電荷, 電解質膜の剛性, 電解質膜を構成している分子鎖の構造(分子鎖の間隔、側鎖の間隔(EW値))を変化させてこれらの特性量の変化を解析し、プロトン伝導性、耐劣化性能に優れた電解質膜が有する特性の提案を行い、シミュレーションにより提案されたプロトン伝導膜のプロトン伝導性、耐劣化性能の評価を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は大量の計算を行うため、計算データが膨大になることが予想される。そのため計算機使用量として研究費を使用し、得られたデータは大容量のハードディスクを購入して保存を行う。また研究成果がまとまることが予想されるため、国内および国外への成果発表旅費として研究費を使用する予定である。また、OHラジカルのGrotthus機構のモデリングについての調査のため、調査・研究旅費を使用する予定である。また、論文を国内外の雑誌に投稿する予定であるので、英文校閲料や論文投稿料に研究費を使用する予定である。
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Research Products
(4 results)