2011 Fiscal Year Research-status Report
離散スペクトル吸光光度法による光ファイバ型超高分解能多成分変動濃度プローブの開発
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23656134
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
酒井 康彦 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20162274)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 貴 名城大学, 理工学部, 准教授 (20372534)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 流体工学 / 乱流 / 変動濃度 / 化学反応 / 吸光光度法 |
Research Abstract |
本研究の目的は,離散スペクトル吸光光度法を応用して,高ペクレ数乱流拡散場,特に高シュミット数が特徴である液相での物質拡散・反応場をマイクロスケールあるいはそれ以下のナノスケールの解像度で連続的に測定できる光ファイバ型超高分解能多成分マイクロ・ナノ変動濃度プローブの開発である.さらに,特に化学反応を伴う乱流混合過程の解明に有効な確率密度関数法における分子拡散モデルの検証に必要なデータを取得することを目指すものである.今年度は以下の研究を行った.(1)まず,第一段階として,2つの高輝度LED(波長520nmにピークを持つ緑色LEDと波長628nmにピークを持つ赤色LED)により2成分の濃度測定システムを設計・製作した.今回のシステムでは,集光系を精密に設計することにより,コア径が10 μmのファイバに光を集光できるように設計した.また,光ファイバプローブの検査部の直径を従来の0.8mmから0.1mmに小さくすることにより,検査体積を1/64にするように設計した.これによりマイクロスケールオーダーの分解能の測定が可能となると予想される.光ファイバプローブについては,発注済みであり,近日中に納入される予定である.(2)二次元乱流噴流での二次の化学反応場実験と濃度場の統計量解析を行った.具体的には単一の二次の化学反応A + B → Rを対象とした実験を行った.ここで,Aはジアゾベンゼンスルホン酸(無色), Bはジアゾベンゼンスルホン酸(無色),Rはモノアゾ染料(赤色)であり,物質Bを含む主流中に物質Aを含む水溶液を噴出した.統計量としては,まず各成分に対する平均濃度場,変動r.m.s.値,スペクトル,自己相関などの基本的な量の性質を明らかにした.また,保存スカラーにより条件つけた条件付統計量の分布も調べ,従来得られていない貴重なデータを得ることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目標は2成分物質に対して高分解能の光ファイバ型多成分変動濃度同時計測システムおよび測定用プローブの開発であった.当初の計画では,光源として半導体レーザーダイオード(LD)使用する予定であったが,慎重に計測システムを設計した結果,LDを使用しなくても,より安価で取り扱いが容易な高輝度LEDにより,目標であるマイクロメートルオーダーの分解能の達成が可能であることがわかったので,最終的に2つの高輝度LED(波長520nmにピークを持つ緑色LEDと波長628nmにピークを持つ赤色LED)により2成分の濃度測定システムを設計・製作した.また,光ファイバプローブについても,検査部で少なくとも100μmの直径の分解能を有するように設計できている.なお,光ファイバプローブについては,発注済みであり,納入され次第,その性能の試験をする予定である. 一方,化学反応を伴う乱流混合過程の解明に有効なデータの取得については,従来の測定システムを使用してはいるが,二次元乱流噴流での二次の化学反応場の実験が順調に進み,基本的な統計量である各成分濃度の平均値,変動濃度r.m.s.値,自己相関係数,スペクトル分布について貴重な知見を得ることができた.また,従来測定が非常に困難とされていた保存スカラー量で条件付けした条件付き統計量についても,解析が進んでいる.今後は,今年度開発された新型多成分変動濃度システムと高分解能光ファイバープローブを使用し,さらに速度場にX型ホットフィルムプローブと組み合わせることにより,変動速度2成分と反応に関与するすべての物質濃度場を同時に測定する予定であり,その準備がほぼ終了した段階である. 以上のように,測定システム,高分解能光ファイバープローブ,化学反応実験のいずれにおいても,多少の遅れはあるが当初の計画通りにおおむね順調に進展していると評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)超高分解能の光ファイバ型多成分変動濃度同時測定用プローブおよび計測システムの開発(3成分への拡張): 平成24年度には,可能であれば,さらに1波長分として,新たにLEDモジュール(青色)を追加することにより,3成分の濃度を同時測定可能なシステムにバージョンアップを行う予定である.(2)二次の反応を伴う二次元乱流噴流の追加実験と微小スケール統計量解析: まず,今年度(平成23年度)に開発された新型2成分変動濃度計測システムと新型光ファイバープローブを使用して,単一の二次の化学反応A + B → Rを対象とした実験を再度実行する.その際,速度場についてはX型ホットフィルムプローブを使用することにより,速度2成分も同時に測定する.このような反応濃度場で多成分変動濃度と2成分変動速度の測定は世界でも例はなく,本研究が世界で初めての実験となりきわめて貴重なデータが得られるものと期待される.また,得られた実測結果から,従来の乱流モデルや分子拡散モデルと比較検討することにより,それらの検証と改良,あるいは新規の乱流モデルや分子拡散モデルの開発を行う予定である.また,得られた成果を取り纏め,国際会議や論文として世界に発信する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験に最低限必要は備品はほぼ平成23年度に購入済みである.したがって,次年度の研究費は,主に消耗品,特に光ファイバープローブの制作費や今後実験装置に付随的に必要となる電子部品や光学製品,各種薬品の購入のために使用する予定である.また,研究成果の発表のための学会参加費や論文執筆にともなう掲載費用などに使用予定である.
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Research Products
(8 results)