2011 Fiscal Year Research-status Report
水中気泡の個別制御とプラズマ同期による革新的促進酸化技術の研究
Project/Area Number |
23656192
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
安岡 康一 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (00272675)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 環境技術 / 水中プラズマ / 気泡制御 / 酢酸 / 有機フッ素化合物 |
Research Abstract |
水中に含まれるダイオキシンや有機フッ素化合物などの難分解・有害物質を完全分解し無害化するため,水中気泡内プラズマの発生方式を根底から見直し,ヒドロキシラジカル(以下OHラジカル)の生成量とエネルギー効率を革新させることを目的として研究した。初年度は,単一気泡制御型プラズマリアクを開発した。処理水を満たした密閉容器下部にセラミック板を密着させ,板中央部に直径数100マイクロメートルの微小孔を開け,さらにその下部にガスタンクを配置した。ガスタンク内は圧力脈動発生素子としてスピーカを置き,酸素ガスを一定流量供給した。このときスピーカにノコギリ波電圧を印加し,ガスタンク内部圧力を変動させた。この結果,酸素ガス流に圧力脈動が加わり,電圧信号に同期して処理水中に安定に気泡を形成することに成功した。微小孔下部においた高電圧電極に,半導体スイッチを使ったパルス電圧発生回路より電圧を加え,気泡生成時刻からの遅延時間をパラメータとしてプラズマを形成した。気泡制御無しの場合と比較して,気泡制御時には1/2以下のガス流量で安定にプラズマを生成できることが分かった。気泡および気泡内プラズマの時間変化は,高速度カメラおよびICCDカメラによって詳細に観測し,気泡径が数mm以下と小さいときにプラズマを形成すると気泡がマイクロ気泡に分裂すること,プラズマ長は気泡径に応じて増加し,消費電力も増加することがわかった。単一気泡制御型プラズマリアクを使用して,メチレンブルーおよび酢酸の分解実験を開始し,分解効率は気泡制御とプラズマ生成条件によって変化することを確認するとともに,制御パラメータを抽出した。さらに,単一気泡制御技術をもとに,10並列プラズマ生成を実現し,今年度目標を達成することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に計画した,単一気泡制御型プラズマリアクタの開発に成功し,それを使って難分解物質である酢酸の分解実験と制御パラメータの抽出を行い,さらに複数気泡制御型プラズマリアクタの開発と動作確認を実施したことから,順調に研究が進行していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成23年度までに開発した複数気泡制御型プラズマリアクタを用い,複数個の同時生成気泡内に,プラズマを発生させる。使用ガスは酸素,空気,アルゴン,ヘリウム等を使用する。気泡の生成時刻に同期して電極に高電圧を印加し,複数個のプラズマを一斉に気泡内に生成する。この際,プラズマ安定化に必要なインピーダンス素子には,エネルギー損失がほぼ無視できるインダクタ素子を使用し,電源効率の低下を防ぐ。これによって,多数個の気泡内プラズマを同時に発生して,大量の処理が可能な大型プラズマリアクタの基本構成を決定する。 また,分光分析装置により酸素プラズからの発光スペクトルを測定し,OH (309 nm),O (777 nm),H (656 nm)ラジカル等の強度を計測し,気泡とプラズマ生成の同期条件を最適化する。純水を使用したプラズマ生成実験も比較検討し,処理水中に生成される,過酸化水素(H2O2)の定量計測を進め,OHラジカルの発生量を見積る。以上の過程で,気液プラズマ三相界面における反応過程をプラズマと処理液の双方の分析により検討し,詳細な解析を可能とする。以上得られた結果を取りまとめ,成果の発表を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年3月の,促進酸化技術に関する研究成果発表と関連委員会の開催および情報収集のための旅費に関して,3月31日までに大学経理からの支出が完了しなかったため,今年度の執行額に残額が生じた。平成24年度は,10並列プラズマリアクタの電極部品,放電ガス,といった評価試験に必要な消耗品を購入すると共に,世界で始めて実現した気泡制御型水中プラズマリアクタの成果発表に必要な旅費を支出する。さらに,論文投稿等にさいしてその他経費を使用する。
|