2011 Fiscal Year Research-status Report
周波数遷移を利用したMEMS単一素子でのベクトル触覚センシング
Project/Area Number |
23656239
|
Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
山下 馨 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (40263230)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野田 実 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (20294168)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 触覚 / 共振 / 圧電 / MEMS |
Research Abstract |
エラストマ中にカンチレバーを埋め込んだ構造体をモデリングし,エラストマ表面に垂直および平行な荷重を印加した状態を有限要素法によりシミュレーションを行い,周波数応答解析により共振周波数が荷重印加に対してどのように変化するかを調べた。その結果,3個の独立な振動モードを用いることにより,各周波数の変化率から3軸ベクトル触覚の各成分を分離して推定することができ,またその触覚応答はわずかに非線形性を含むことを明らかにした。さらに,この応答の非線形性が周波数変化から印加荷重を逆推定する際の推定誤差を大きく拡大する要因となっていることを見出した。そこで,振動モード形状から触覚センサ応答の非線形性を推定し得る指標を見出すため,シミュレーション結果の振動モード形状を詳細に解析し,応答非線形性との関係を調べた。その結果,半径方向の振動振幅のカンチレバー長さ方向に対する二階微分に相当する曲率の変化が激しい振動モード形状では応答非線形性が大きくなり,この指標の値がベクトル3方向を検知する各モードについて非線形の大小と順位が一致することが見出された。この結果より,最終的なセンサ応答のシミュレーション結果を待たずに振動モード形状の段階で応答非線形性が小さい振動モードを選択できる可能性が示された。 マイクロ力覚センサデバイスの作製においては,シリコン熱酸化膜上にゾル・ゲル製膜によるPZT薄膜を含む圧電キャパシタを積層した構造で,基板上にてL字形に形成した後基板から反り上がることで二重湾曲構造をもつ圧電カンチレバー構造体を実現した。作製したカンチレバーを交流駆動することにより,3軸ベクトル触覚推定に用いた各モードを個別に励振できることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定では本原理による触覚センシングのメカニズムを明らかにするためのシミュレーションであったが,その経過の中から応答非線形性の影響とその軽減法という観点を見出し,振動モード形状と応答非線形性の関係を示す端緒を得たことから,さらに多方面からセンシングメカニズムを検討する方策が得られた。また本観点により,学術上のみならずより実用的な側面からデバイス設計を進めることができるようになる。一方,センサ作製プロセスの面では,裏面からのシリコン垂直エッチングにより構造体を破壊せずに歩留まりよくカンチレバーセンサを実現する手法を確立し,また作製したセンサがシミュレーションにより示された振動モードを再現できることが示されたことで,センシング手法の提案だけでなくその実現可能性を具体的に示すことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
センサ動作のシミュレーションにおいては,新たに見出された応答非線形性を軽減する振動モードの設計手法の確立を進める。現状での指針はより単純な振動形状が応答非線形性の面から有利であることを示しており,より単純なセンサ形状が好ましい可能性がある。これは実際のセンサ構造作製の面からも,脆弱な構造体をコンパクトにまとめることが出来るという点で有利である。またセンサ作製プロセスは今年度先行して行ったが,順序が相前後したエラストマの減衰特性の評価を次年度押し進める。これによりエラストマ中での構造体の振動をより正確にシミュレートし,精密なセンサ設計法に役立てることを目指す。さらに,作製したマイクロカンチレバー構造体をエラストマで被覆し,共振駆動を行ってエラストマ表面からの荷重印加に対する応答特性を評価する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度はシミュレーションをメインに行ったため消耗品の使用が当初予定よりも少なくなった。次年度はマイクロセンサデバイスの作製を本格化すると共に,結果的に相前後したマクロモデルによるセンサの動作原理解明を進めるため,これらに必要な材料消耗品費用として次年度予算と合わせて使用する。
|