2011 Fiscal Year Research-status Report
高次複屈折光学材料の波長分散特性を利用した視覚復号型暗号デバイスの開発
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23656250
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
梅田 倫弘 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60111803)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩見 健太郎 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80514710)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 視覚復号暗号 / 高次複屈折 / 波長分散 / セキュリティ / 紫外線硬化液晶 |
Research Abstract |
本研究は、情報セキュリティーにおいて利便性と安全性の相反する要請を実現させるために、視覚復号型暗号技術の一つとして、高次複屈折による照明波長選択性を利用した新規なセキュリティーデバイスの有効性の確認を目指し、安全安心な社会実現に寄与する。具体的には、(1)複屈折位相差が一波長を与える複数枚の波長板と2分の1波長板を積層化させた高次複屈折モザイクパターンデバイスを作製すること、(2)直交もしくは平行ニコルで観測したとき設定照明光源波長のみで暗号透過パターンを観測できること、(3)照明光源波長及び波長幅の違いによる暗号透過パターンの弁別特性を明らかにすること、(4)高次複屈折材料として光硬化液晶を利用して電子的に情報パターンを書き込む技術を確立することによって、次世代視覚情報暗号化デバイスの基礎を確立する。 以上の目的をもとに研究を遂行し、H23年度は以下の様な成果が得られた。1)大きさが5mm角の1波長および2分の1波長の高分子フィルム波長板を複数枚用いてn波長積層画素と(n+1/2)波長積層画素を作製した。次に、これらの積層画素をモザイク状に暗号化文字パターンを2次元平面内に配置した。ここで、nの最適な数値を求めるため、ミューラー行列によるシミュレーション解析を行い、透過分光スペクトルのランダム性を確保できる条件を明らかにした。2)直交する直線偏光子(直交ニコル)の間に製作したモザイクパターンを挿入して、各画素の分光透過特性を分光計によって測定した。その際、2種類の波長積層画素について照明光源波長に対する透過率を明らかにし、波長板の設計波長から20nmずれた波長においてコントラストが0.7を超えるのに必要な波長板の最小枚数を実験的に求めた。これによってコントラストの低下を防ぎつつパターンのランダム性を保証する知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、情報セキュリティーにおいて利便性と安全性の相反する要請を実現させるために、視覚復号型暗号技術の一つとして、高次複屈折による照明波長選択性を利用した新規なセキュリティーデバイスの有効性の確認を目指し、安全安心な社会実現に寄与することを目的とする。これを実現するために、1)波長板積層によるモザイク暗号パターンデバイスの作製、2)1波長・波長板の積層枚数の最適化の研究をH23年度に実施した。その結果、各項目について以下の様な成果が得られた。1)では、大きさが5mm角の1波長および2分の1波長の高分子フィルム波長板を複数枚用いてn波長積層画素と(n+1/2)波長積層画素を作製した。次に、これらの積層画素をモザイク状に暗号化文字パターンを2次元平面内に配置した。ここで、nの最適な数値を求めるため、ミューラー行列によるシミュレーション解析を行い、透過分光スペクトルのランダム性を確保できる条件を明らかにした。これらの研究成果が2011年に学術誌「光学」に論文が掲載された。2)では、波長板枚数に対する透過率お波長特性をシミュレーションすることで、異なる波長に対する複屈折率次数の組み合わせを求めることに成功し、これによって特定のニ波長に対して透過特性が異なるモザイクパターンによるデバイスの製作に成功した。この成果は、波長掃引によって暗号を復号できるという1)のデバイスの欠点の解決に寄与した。以上のことが、自己評価「おおむね順調に進展している」の根拠である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)波長板設計波長に対する暗号パターンの識別特性および設計指針の確立:前年度の実験で得られた積層枚数に対するコントラスト特性の知見を元に、波長板の積層枚数を最小にして製作した暗号デバイスを作製し、実際に照明光源波長を変えながら透過パターンの画像解析を行って、照明波長に対する暗号パターンの識別特性を明らかにする。さらに、設計波長からずれた光源で照明して暗号パターンの秘匿性を明らかにする。光源には、実用化を視野に入れて、発光波長が異なるLEDアレイを製作してモザイクパターン照明に利用する。2)紫外線硬化液晶を用いた暗号情報パターンの電子書き込み技術の確立:将来の本デバイスの実用化を視野に入れるためには、上述の実験に用いられた波長板積層画素では、製作コストやパターン解像度の点から十分ではない。そこで、高空間分解パターンを書き込みできる高次複屈折材料として、紫外線硬化型液晶に着目した。この液晶材料をセルに封入して外部電界を印加することで電界に応じて液晶を配向させ、その状態で紫外線を照射して液晶配向状態を固定化させる。これによって印加電界パターンに応じて複屈折が異なる配向パターンが実現できる。このようにして液晶セルに所望の電圧パターンを印加すると同時に、セル下部より透明電極を通して紫外線を照射して電界印加により配向された複屈折パターンを固定化させる。この方法を確立させるために、セル厚、印加電圧、パターン書き込みのための書き込みパルス電圧の時間幅と振幅等を最適化させて、高次複屈折暗号デバイスとして利用できることを明らかにする。3)暗号認証システムの構築:以上の研究で得られた知見を元に、有効な認証システムを開発し,本手法が初期の目標を達成していることを実証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H23年度に遂行した研究においては、液晶材料を有償で購入予定であったが、製造メーカー(DNC(株))と協議の結果、本研究が同メーカーにとっても新規な材料用途であることから無償で提供されることになり、未使用額が発生した。H24年度は、主に紫外線硬化液晶の硬化特性や複屈折計測が主たる研究内容となる。したがって、H23年度未使用額とH24年度請求額を合わせた研究費は光学部品やデバイス照明のための電子部品の購入および研究成果発表のための旅費等に充てられ、それ以外の実験設備は既存のものを使う。
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Research Products
(3 results)