2011 Fiscal Year Research-status Report
超音波速度変化イメージングによる血管不安定プラークの無侵襲検出
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23656267
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
堀中 博道 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60137239)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 血管プラーク / 超音波速度 / 無侵襲 / 医療診断 |
Research Abstract |
血管の内面にプラークと呼ばれる異常な組織ができ、そのプラークが何らかの原因で剥がれると、血管が詰まり心筋梗塞や脳梗塞などに至ることがある。剥がれにくいプラーク(Fibrous:線維性組織)か剥がれやすいプラーク(Lipid:脂質性組織)かを判定することは非常に重要であり、そのために組織性状を知る必要があり、有効な検出法の開発が期待されている。本研究では、超音波の速度の温度依存性が物質によって大きく異なることを利用して、体外から血管のプラークにおける脂質分布を検出する方法を提案した。 まず、血管ファントムを作製し、内部に牛脂あるいは鶏肉による模擬プラークを取り付け、超音波加温による超音波エコーパルス波形を観測した。超音波加温による波形のシフトを観測し、予想される値のパルスシフトが得られていることを確認した。次に、改造した超音波診断装置を用いて血管ファントムにおける超音波速度変化を画像化する実験を行った。超音波アレイトランスデューサーの横に超音波トランスデューサーを設置して、超音波速度変化の測定領域を加温した。超音波エコーパルスの加温による部分的なシフトから超音波速度変化画像を求めた。超音波速度変化画像は、擬似プラーク内部の脂質分布を明瞭に示し、外部からプラークの物質の識別ができることを示した。さらに、血流の影響を検討するために血管ファントムに水をチューブポンプで流し、超音波速度変化画像を求めた。水の流れがあっても信号取得方法、画像構築方法を工夫することによって擬似プラーク内の脂肪分布が得られることを示した。 研究成果については既に国内の学会で発表しているが、10月にドイツのドレスデンで開催されるIEEEの超音波国際シンポジウム(IUS 2012)で発表する予定である。さらに、論文としてまとめて英文誌に投稿する準備をしている。特許出願はすでに行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書では、「研究の目的」として、超音波の速度の温度依存性が物質で大きく異なることを利用して、血管のプラークの識別に用いる。超音波加温による超音波の速度変化を画像化して、血管のプラークの不安定な領域を外部から無侵襲に観察できる新しい診断装置の可能性を示すとしていた。「研究実施計画」に従って下記のようにおおむね計画通りすすめることができたが、実用化のためには脈動に対する影響の検討、実験が不足している。(1)血管ファントムの作製:超音波に対して生体組織と類似の特性が得られるようにグラファイトを入れた寒天を用いて擬似血管を作製し、中に寒天と牛脂を用いて作製した擬似プラークを挿入し、プラークが存在する頸動脈を再現した。(2)測定原理の実証:単素子の超音波トランスデューサーによる送受信システム(パルサーレシーバー)を用いて、エコーパルス波形を観測し、擬似プラークからのパルスシフトを検出した。油脂が分布したプラークからのパルシフトは周囲と反対の符号を示し、また、その値は予測された数値とよく一致しており、パルスシフトを検出することでプラーク成分の識別ができることを示した。(3)超音波速度変化画像装置の作製:現有の超音波診断装置を改造して血管プラークの超音波速度変化イメージのための装置を作製した。加温のために超音波トランスデューサーを設置した。生体組織とのマッチングのために先端にヒマシ油を充填した天然ゴムの袋を取り付けた。(4)血管ファントムにおける超音波速度変化画像の構築:血管ファントムに適用して超音波速度変化イメージを構築した。脂質によるプラーク部分で、負の超音波速度変化が得られており、脂肪分布が明瞭に画像化できることを示した。
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Strategy for Future Research Activity |
実際に頸動脈に適用するためには、超音波速度変化画像への脈動の影響が問題になると考えられ、信号処理法、画像構築法の検討が必要である。現在までの実験から、脈動の影響を抑制して超音波速度変化画像を構築するためには、心電同期信号の検出と信号取得方法の動画モードでデータ取得を行う必要があると考えている。脈動を再現する装置を作製し、できるだけ多くの実験を行い、信号処理法の改良、有効な画像構築プログラムの作成、改良を行い、実際の頸動脈に近い状態で本方法、装置の有効性を示す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
基本的な装置は、現有の超音波診断装置をベースに作製した。血管ファントムも寒天で作製するのが超音波に対して実際の血管に近い性質が得られることが分かり、研究室で安価に作製することができた。血流を想定して水を流し、脈流の影響を調べるための装置と実験を計画したが、時間が足りず、次年度の予定とした。そのために、当初の予算を次年度に繰り越す形となった。 24年度は、装置の実用化に必要な脈動の影響の抑制法を検討するために、ファントム、装置の見直しと信号処理、画像構築プログラムの改良を考えている。そのために装置、ファントムの改良のための費用の他、プログラム作成や実験補助のために人件費、研究成果の発表のために旅費を必要とする。
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Research Products
(6 results)