2011 Fiscal Year Research-status Report
長大土構造物の浸水箇所を探知する閉回路レーダー法の開発
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23656298
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
上野 勝利 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 准教授 (70232767)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高原 利幸 金沢大学, 環境デザイン学系, 助教 (20324098)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 閉回路レーダ / 空洞 / 堤防 / 道路 / 盛土 / 護岸 / 水浸・排水繰返し / FMCW |
Research Abstract |
昨今の極端気象の影響によって、豪雨による地盤災害や土構造物の被害がたびたび発生している。土の変形強度特性の劣化や、排水時の土砂流失による空洞発生など、土構造物の浸水・漏水による被害を防ぐためには、土構造物内部の水分状態の継続モニタリングが必要である。しかし、経済的に実施できる調査手法は十分整備されていないのが現状である。そこで河川堤防や道路盛土などの線状長大土構造物内部を継続的にモニタリングし、浸水・漏水や空洞の発生などの異常個所を探知するための「閉回路レーダー法」を開発し、地盤災害の被害低減に資することが本研究の目的である。 伝送線路上を進行する高周波信号は、伝送線路上に特性インピーダンスの変化点で一部反射する。その反射波を観測することにより、伝送線路上の異常点の位置と程度を検出することができる。その原理をここでは「閉回路レーダー法」と呼ぶ。本研究では河川堤防、盛土や舗装などの漏水・浸水や空洞の発生箇所を探知するための閉回路レーダー法の開発を行っている。 閉回路レーダー法による異常箇所の検出原理の実証を第一の課題とした。そこで23年度には一部に既製品を組み合わせレーダー装置の第一号機を開発に取り組んだ。高含水比地点からの反射波検出を実現をめざし、閉回路レーダー法に適した高周波信号の諸元の決定と、専用機の設計に必要なパラメタについて検討した。 送信信号の振幅や周波数などの諸元の検討が必要なため、送信波の発生には、任意波形ファンクションジェネレータの購入を予定していた。しかし、昨今のDDSチップの高性能化から、信号発生に適したDDS評価ボードが見つかったため、それを使用した装置を試作した。市販の方向性結合器を用いて、反射波と進行波を分離する。自ら設計したディテクタ回路を試作した。伝送路の減衰や目標とする分解能の観点から、500MHzまでの信号発生が可能な装置とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では広いレンジの高周波信号を発生することのできる任意信号発生器を購入し、閉回路レーダ法の原理の検証を行う計画であった。その装置は予算の大部分を占めていたため、配分額の一部保留処置が講じられたため、調達困難と判断し計画の見直しを行った。幸い、高周波デバイスに対する市場調査の結果から、今回の目的に合致したDDSデバイスを見つけ出すことができ、次年度の計画としてた閉回路レーダー装置の試作を前倒しすることとした。含水比異常の箇所での反射波検出はまだ十分実現できていないものの、装置試作は進んでいる。 一方、並行して進めている静電容量計による盛土等の土構造物の含水比モニタリング、水浸・空洞化モニタリングの現場計測計画の進捗も良好である。したがって、全体としておおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に行った市場調査から、アンテナ設備の保守に用いられる計測装置の低価格化が進み、閉回路レーダ法による地盤調査への応用の可能性が見出された。既存装置を活用した地盤調査法の開発も、本来の目的達成の1経路として検討する。 新たな課題として含水比などの土の状態量と複素インピーダンス特性との関係を実験的に明らかにし、 伝送線路上での反射特性から周辺の土の状態を判定するために必要な知見を得ることとする。伝送線路を土試料中に埋設し、伝送線路を通過する高周波信号の応答特性を測定する。実験には土試料の整形や伝送線路を保持する治具が必要であるため、それぞれ開発する。特に土粒子界面の活性度により、伝送線路に与える高周波信号の周波数と複素インピーダンス特性との関係が変化すると予測される。 一方、常時モニタリングに適した装置を開発するため、閉回路レーダ装置の試作は引き続き推進する。DDS(ダイレクトデジタルシンセサイザ)デバイスやVGA(可変利得増幅器)デバイスなど、高周波デバイスが計画時の想定以上に充実していることが分かった。特に信号発生部については、比較的容易に実現できるとの見通しを得ることができている。そして含水比変化や空洞などの存在を検知する閉回路レーダ法の原理を検証する。 資金的には不足すると思われるため、更なる研究資金の獲得を行いながら研究を遂行したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品で購入するノートパソコンと高速AD変換ボードは、レーダー装置の信号解析部を構成するために必要である。消耗品費に計上した回路基板試作費は、閉回路レーダー装置の構成モジュールを開発するために必要である。これまでの開発経験から実装する電子部品の代金も含む金額を算定した。24年度はFMCW波発生部など主に送信部周りの開発に使用する。土の複素インピーダンス特性を測定するために必要な、治具類の政策も消耗品費として活用する。 調査旅費は、調査技術や高周波装置に関する技術情報の収集のために必要である。旅費、論文投稿料などはこれまでの実績を考慮し、算定した。分担者は、閉回路レーダー法による現場計測を計画・準備する。研究が順調に進捗し、可能ならば、24年度内に実施する。研究打ち合わせと成果発表・情報収集のための旅費、成果発表のための論文投稿料を配分する。 連携研究者の協力を得、高水時や越流時の堤防内の不飽和浸透・変形解析結果から、異常個所のモニタリングに適した埋設箇所を検討する。将来的にはモニタリング技術、模型実験技術、数値解析技術を援用し、長大土構造物のメインテナンス技術として提案できるようにしたい。 繰越し額である1,076,639円については、すでに物品を購入し、平成23年3月2日に納品され、全額執行済みであり、4月に支払を完了した。購入した物品は、サイトマスター(アンリツ製S332E(2MHz~4GHz, 1,076,639円)である。
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Research Products
(3 results)