2012 Fiscal Year Research-status Report
ダニエレ・バルバロ著「透視図法の実際」(1569)に関する図形科学的研究
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23656376
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
植田 宏 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (00117334)
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Keywords | ダニエレ・バルバロ / アンドレア・パッラーディオ / 透視図法 / 図形科学 / 劇場 / ルネサンス |
Research Abstract |
24年度には、23年度にディジタル・データに変換し、ファイルしたダニエレ・バルバロ著「透視図法の実際」パート2の図版について、画像処理ソフト(新規購入)を使い画像の調整を行い、透視図法の技法書ピエロ・デッラ・フランチェスカ著「絵画の遠近法」(G. Nicco-Fasola編、1984)等との比較を行い、建築学会九州支部研究報告会で発表した。 その他、パート2について現代イタリア語への変換を行い、日本語抄訳については作成中である。パート2はocchio(視点)、termine(画面)などのほか、linea horizontale (水平線)、perfetto (基準となる正方形)、quadro digradato (短縮された正方形)などの透視図法の構成要素が文字と図で明示されていた。また、平面図形の透視図表現、簡易立体の透視図表現について詳述され、3次元の実空間、2次元の透視図との関連についてのバルバロの基本的考え方が整理されている。 2012年9月にはイタリア北部へ現地調査に赴いた、ルネサンス時代以降の劇場建築として、サッビオネータの劇場、パルマの劇場の現地調査を行った。それにより、1400年代末からの劇場舞台設計において、観客席、オーケストラ、プロセニアム、水平なステージ、勾配のあるステージ、背後の壁などと関連した設計手法について調査・研究の必要性が生じてきている。また、レオナルド・ダ・ヴィンチ「最後の晩餐」に関し、鑑賞位置による透視図法壁画の歪について確認を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ダニエレ・バルバロ著『透視図法の実際』は、先人の技法書からの引用が多く、バルバロ独自の図版を抽出することは目的の一つであった。23年度には同著書とピエロ・デッラ・フランチェスカ著『絵画の遠近法』における、透視図法の基本的事項に関する図版の比較を行い、建築学会九州支部研究報告会(九州支部)において、バルバロがパート1内で用いた34枚の図版の中で、ピエロが第一書で使用した図版との類似が7枚に止まることを報告した。24年度には、パート2について同様の報告を行ったが、類似の図が使用されていても図中に書かれた記号については別の表記が用いられ、図によっては理解しがたいつけ方を行っていることを指摘した。しかし、透視図法の技法書として、内容は有効であると判断できた。 23年度に入手したバルバロ翻訳・コメントのヴィトルヴィウス『建築十書』イタリア語訳1567(マンフレッド・タフーリ編1997)については、謝金を使用して全篇をスキャンした。パッラーディオによる挿図の中にテアトロ・オリンピコを思わせる奥行きのある劇場舞台図があり、バルバロによるコメントの読解と併せて有効に使用したい。ただし、性能の良いスキャナーを使用したのだが、綴じたままの大部の書物のスキャンであり、想定外の時間を要してしまったのは、昨年と同様である。 実空間調査としてのサッビオネータの劇場、パルマの劇場では、舞台廻りの構成を確認でき、前者ではU字形の観覧席からの写真撮影、後者については撮影禁止であったが、勾配のついたステージにおける傾斜感を体感することができた。バルバロの著書パート4における奥行きのある舞台背景に関する検討には貴重な経験だと認識している。 以上が、(2)おおむね順調に進展していると判断した理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度にはパート4の研究に分析が必要と思われる部分について、23、24年度と同様、現代イタリア語への変換、日本語抄訳、および他の技法書内の図版と比較・検討する。特に、古典建築の様式に関する部分の後段には舞台背景に関する図版が見られ、透視図法構成要素との関連から、当時の劇場における観客に対する考え方、すなわち複数の視点からの視知覚画像の差異についての認識を図形科学的な観点から検討する。そのための透視図法技法書として、類似図版を多数見出すことができる、現有書籍Vaughan Hart & Peter Hicks編Sebastiano Serlio, ON ARCHITECTURE, Vol. 1 & 2, Yale Univ. Press, 1996(以下セルリオ著「建築論」) との比較を行う。ただし、同書内には透視図法の基本的事項との関連を描いた図が見られないため、その点に関する記述、図版を探索し、セルリオの考え方を整理しながら詳細な検討を行う必要がある。また、既述したように、14世紀末以降のだまし絵的3次元空間の構成方法を検討しながら、奥行きの深い、勾配のある舞台についての構成と、バルバロの著書パート4に見られる舞台構成についての解説図とを比較検討する必要がある。 実空間調査との関連では、バルバロの「ヴィトルヴィウス『建築十書』翻訳・コメント」における挿図を作成する際にパッラーディオが参考にしたローマ時代の劇場を調査するために、ローマ、シチリア、或いは南フランスへの調査を予定している。また、観客席中央ではなく、左右からの視覚像を確認するために、ヴィチェンツァのテアトロ・オリンピコの再調査も検討している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
外国旅費については23、24年度とも想定予算を越えた支出となったが、25年度の調査においても、円安、燃料費の値上がりなど想定以上の費用が掛かることが予想される。昨年度までの繰り越し分をそれに充て、2週間程度の調査を予定している。国内旅費については、北海道での建築学会大会、九州における研究報告会での発表のための使用を予定している。 物品費としては関連書籍の購入のみを計上し、消耗品費は特に予定していない。謝金等、その他については23、24年度と同様である。 各費目について、全体経費の90%を超えることはない。
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Research Products
(1 results)