2011 Fiscal Year Research-status Report
日本における岩盤掘削技法と石造建築文化に関する調査研究
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23656377
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Research Institution | Cyber University |
Principal Investigator |
柏木 裕之 サイバー大学, 国際文化学部, 教授 (60277762)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 石造 / 採石 / 石工 / 技術 / 凝灰岩 / 建築史 |
Research Abstract |
木造に比べ石造に関する研究は大きく遅れており、初年度である平成23年度は日本国内の採石場および石造建造物を訪ね歩き、基礎資料の収集に務めた。 日本の石材は大きく花崗岩系と凝灰岩系に分かれるが、平成23年度は建築材料として重用された凝灰岩系を中心に、鋸山(千葉県)、大谷(栃木県)、竜山(兵庫県)、伊豆(静岡県)、新島(東京都)、人吉(熊本県)、小豆島(香川県)などの採石場で調査を行った。操業を中止した採石場も散見され、跡地の利活用が課題の一つとして認識された。 採石場が広がる地域には石を用いた建造物も数多く残されている。例えば栃木県大谷地区には石蔵が多く作られ、西根地区は日本でも稀有な石の町並みが残されている。大谷石を研究するNPO法人と連絡を取りながら、大谷地区の歴史と現状を整理した。また高砂市の竜山地区には石の宝殿として有名な巨石を祀った神社があり、石のまちとして現在も石材加工業が続いている。歴史的建造物にも石材が使われており、地元の教育委員会と協力しながら視察した。このほか、長崎県対馬やコーガ石の産地として知られる東京都新島では石屋根や石梁の倉が残され、離島の建築と環境の関係を調査した。 日本に本格的な石造建築が作られるのは明治になってからであるが、その作業を担ったのは城郭の石垣などを担当していた石工である。近世から近代に変わり、在来の採石業者や石工がどのように新技術を取り入れ、対応したのかは興味深い課題である。平成23年度はその一つとして城郭の石垣や石切丁場について基礎資料を収集した。石垣の研究は大坂城、金沢城、甲府城などで精力的に進められており、各地の研究者と情報の交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は初年度であり、基礎資料の収集にとどまったが、各地の研究者や石材関係者と情報交換を進めることができ、今後の研究方針を検討することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
新しい技術が導入された明治期は建築の世界にも大きな変化をもたらした。在来の大工は見よう見まねで西洋の建築を作り「擬洋風」建築と呼ばれる新しい様式を生み出した。同じような構図は石工の世界にも起こったはずであり、城の石垣普請を担っていた石工達が新しい西洋石造建築の技術を獲得していった過程は興味深い。今後は近世から近代にかけての石造建造技術の解明に焦点をあて、研究を進める予定である。 直接的な資料が限られる時期であるため、比較的資料の豊富な大正期から遡ると共に、江戸期の石垣普請の建築技術の検討も進め、明治期を挟む両時期から考察を進める計画である。 そのため城郭の研究者との情報交換や石垣秘伝書の解読、分析を行うとともに、各地の石材業者に残された石工に関わる古文書の収集、解析を進める計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
近代の石工に関する資料は未だまとまっておらず、各地の石工の蔵に収納されていると思われる。また石造建造物の図面や写真資料も、文化財として指定された物件を除けば、十分に整備されているとは言い難い。そのため、各地の採石場や石造建築を直接訪ね歩き、聞き取り調査を行うとともに、地域の図書館に収められた郷土史などの資料を収集する必要がある。このため、現地調査に必要な旅費および聞き取りに対する謝礼、文献資料代などに多くを使用する計画である。また得られた資料を記録保存するための電子機器類の整備も必要に応じて行う予定である。
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Research Products
(1 results)