2011 Fiscal Year Research-status Report
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23656391
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤原 巧 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10278393)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 希土類フリー発光体 / 残光・蓄光特性 / ガラス結晶化 / 欠陥構造制御 |
Research Abstract |
科学技術に対する社会要請の中で、特に「環境調和」、「安価・低コスト」、「省エネ」は、二酸化炭素を抑制し環境調和型の持続社会を構築するために、ますます重要性を増しているキーワードである。本提案ではこれらに応えつつ、萌芽的・挑戦的に推進する研究開発の一例として、これまでにない、ガラスにおけるナノ結晶化や熱処理により誘起される欠陥構造制御を活用する発光特性の発現と環境調和型の蓄光材料開発を進めている。具体的には、元素戦略的な観点から、希少元素である希土類を含まない、希土類フリー酸化物発光体やガラスを用いて、誘起される欠陥構造が起源となり発光の時間特性に変化を与え、この発光の時間制御による蓄光効果が高効率に発現する新材料の開発を目的とする。初年度の目標を、「欠陥構造の形成と発光・残光に関する基本特性評価」と設定した。熱処理やガラス結晶化によるナノ構造制御により、誘起される欠陥構造を明らかにする実験として、電子スピン共鳴法や分光学的手法(非弾性光散乱)を試行した。以下に研究成果を示す。(1)電子スピン共鳴により、典型的な酸化物セラミックスである酸化ジルコニアの残光特性が酸素欠陥に起因する現象であることを明らかにした。(2)酸化ジルコニアの残光特性は熱処理温度や雰囲気、さらには結晶の構造相転移と強く関連し、各種条件の最適化により希土類フリー残光体として有望であることを示した。(3)酸化物半導体を析出する結晶化ガラスにおいて、結晶化によりガラスでは発現しない残光特性が現れ、その起因はガラス結晶化に伴い生成される格子間元素によることを初めて見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標「欠陥構造の形成と発光・残光に関する基本特性評価」に対して、熱処理やガラス結晶化によるナノ構造制御により、誘起される欠陥構造を明らかにする実験として、次の3通りの実験方法を試行した。(1)光吸収スペクトルによる測定と欠陥構造の解析(2)ボソンピークによる分光学的手法と結晶化のその場観察(3)電子スピン共鳴(ESR)測定による不対電子型欠陥の解析特に(2)については、ガラス結晶化の初期過程を明らかにする、これまでにはない世界初の手法として、我々のグループのオリジナルな測定法である。これらの手法をほぼ確立し、前述したような貴重な成果を多く得ることができた。震災により実験室を失った影響は甚大であり、現在も充分な実験設備・環境を確保できない状況が続いているが、他研究機関の協力も得て創意工夫により推進している状況である。震災前の計画からはおおむね順調という評価であるが、年初はほとんど壊滅的な状況であったことを考えると、むしろ驚くべき成果であるといって過言ではなかろう。
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Strategy for Future Research Activity |
第2年度の目標を「結晶化および熱処理プロセスとキャリア捕獲構造との関係の解明」として進めたい。初年度の研究成果により、選定された候補ガラスやセラミックス系の結晶化および熱処理による高効率な欠陥生成が期待される。次年度においては、結晶化や熱処理プロセスの各種条件が生成欠陥に与える影響を明らかにし、さらに、ガラスやセラミックスの出発組成についても検討を行う。具体的には、結晶化・熱処理処理温度や時間、昇温・急冷速度や雰囲気など、各種の条件が欠陥生成に与える効果を明らかにし、欠陥の種類・量に加えて、エネルギー準位(残光寿命)をある程度制御可能な結晶化プロセスの確立を目指す。キャリア捕獲中心である欠陥の性質は、機能性である蓄光特性(寿命)に直接関わるキーパラメータであり、この新技術・新材料が実用に供するかどうかを見極める重要な実験研究となる。例えば残光寿命の点からは、一夜間に相当する10時間が目標となる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成24年度請求額とあわせ、次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。
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Research Products
(5 results)