2011 Fiscal Year Research-status Report
不規則性の導入と緩和状態制御による金属ガラスの再生
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23656418
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
才田 淳治 東北大学, 学際科学国際高等研究センター, 准教授 (20359540)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
譯田 真人 岩手大学, 工学部, 助教 (00550203)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 金属ガラス / 構造緩和 / 不規則性 / 機械的性質 / 構造制御 / シミュレーション |
Research Abstract |
平成23年度は(1)および(2)の基礎的検討を行った。以下にその概要を述べる。 (1) 局所不均質構造金属ガラスにおける緩和状態の諸特性に与える影響の調査 金属ガラスの緩和状態が機械的性質や相変態にどのような影響をもたらすのかをZr-Al-Ni-Cu-Pd合金を中心に検討した。まず緩和状態は破断強度には大きな影響を与えないが、延性(塑性変形性)や硬度は緩和状態に依存することを示した。未緩和な状態は延性に優れ、硬度も低下することがわかった。また、核生成や粒成長といった相変態挙動も緩和状態に大きな影響を受け、未緩和ガラス合金では、高い初晶核生成頻度と低い粒成長速度を有することを実観測によって明らかにした。このような依存性を示す要因として、ガラス合金の局所構造との相関から考察した。 (2)ガラス遷移現象を利用した未緩和ガラスの再生と機構解明 ガラス合金をガラス遷移温度直上で熱処理後、冷却する速度を変化させることで緩和状態をある程度制御することができる知見を得た。さらにこのような緩和状態の制御によって硬度に変化が現れることも明らかにした。また分子動力学シミュレーションによって冷却速度の違いによる緩和状態の変化、また一旦緩和させたガラス合金を再度ガラス遷移温度直上での熱処理と急冷によって未緩和な状態に再生(Rejuvenation)できることを明らかにした。以上の結果は緩和状態がガラス遷移温度直上での冷却速度によって支配されるという実験事実をシミュレーションによって追認できたことを意味するとともに、今後このモデルを使ってガラス合金の緩和状態制御の技術確立を目指せるものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
緩和状態が機械的性質や相変態などの諸特性に及ぼす影響を明らかにし、金属ガラスにとって重要な因子となることを示すことができた。また緩和状態を予測する計算機シミュレーションを実施し、予備検討で明らかにしたガラス遷移温度直上での冷却速度が決定因子であることを再現できた。また実験上でも熱処理によって緩和ガラスをある程度再生させるとことできる知見を得た。 これらの結果は緩和状態の重要性と制御の可能性を示すものであり、本研究の当初の23年度目的を達成するものであると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
「(1)局所不均質構造金属ガラスにおける原子スケールでの機械的ディスオーダー導入手法の開発とそれによる動的ガラス構造遷移の評価」では、金属ガラスに対して、局所的あるいは均一に加工を施すことで原子レベルでのディスオーダーを導入できるかどうか、さらにそれによってガラス構造に変化が起こるのかどうかの観点で実験あるいはシミュレーションの観点での検討を行う。 「(2)ガラス遷移現象を利用した未緩和ガラスの再生と機構解明」では、緩和状態の異なる材料をガラス遷移温度直上で熱処理後、急冷する手法によりその緩和状態の制御が行えるかどうかについて他の合金系についても検討を加える。 「(3)動的シミュレーションと中距離範囲モデリング」については、(1)および(2)で得られた知見を分子動力学、リバースモンテカルロ法、多面体クラスター解析等のシミュレーションを用いてモデリングし、ガラス遷移、相変態、変形に対するガラス構造(緩和度またはディスオーダーの導入度)の影響を考察し、理論構築に役立てる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度は、緩和挙動についてのシミュレーション評価によって現実の実験結果をかなり再現できることが判明した。従って、これらを十分に検討した上で実際の試料実験を行った方が良いと判断した。このため試料作製と解析に関する研究費用を中心に残が生じた。24年度は23年度の結果を踏まえ、今後の研究推進で記載した(1)~(3)の課題を円滑に推進することを目標にし、繰越額も含めた研究費を試料作製、加工等の材料費の他、緩和状態評価のための消耗品購入に充てる。またシミュレーションのための計算機整備、ソフトウェア購入も検討する他、成果の積極的な公開も目指す。
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Research Products
(3 results)