2011 Fiscal Year Research-status Report
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23656438
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
高橋 有紀子 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (50421392)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 強磁性絶縁体 / Coフェライト / スピンフィルタ |
Research Abstract |
スピンの自由度と極限に発達したSiテクノロジを融合した半導体スピントロニクスの実現には室温でSiへスピンを効率よく注入する必要があるが、それに成功した者はいない。本研究では、強磁性絶縁体の1つでありキュリー点が室温よりも高いCoフェライトを用いて、そのスピンフィルタ効果を活用することにより実現する。鍵となるのは、欠陥のないCoフェライトを作製する革新的技術の開発であり、本研究では、ラジカルまたはオゾン酸化法用いた層状成長により高品位なCoフェライトの作製に挑戦する。さらに、Si上に欠陥のないCoフェライトを作製して、室温でのスピン注入を実現する。 本年はまず逆位相境界や酸素欠損のない高品位な薄膜を作成するためにラジカル源を用いた酸化によりCoフェライトの作成を行った。その結果、室温では酸化は進まないものの温度を上げることによりCoフェライトが形成されることが明らかとなった。電子顕微鏡による微細構造観察からもCoフェライトの格子が観察された。しかし、磁化曲線では飽和させるのに非常に大きな磁場を要するなどまだ多くの欠陥が残っていることが示唆される。また室温ではほとんどオーミックな伝導特性を示しており、酸素血管が電子のホッピングサイトとして機能していることがわかる。 来年度はラジカル酸素を用いた酸化を行うと同時にCoフェライトそのものを蒸着する等室温で絶縁体となるような薄膜の作成方法を確立したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
酸化薄膜の欠陥の評価は通常、微細構造または電気伝導の一方で行われる。しかし、膜の品質が膜厚の方向で異なっている場合などもあり電気伝導特性の情報だけでは十分ではない。本研究では電子顕微鏡による微細構造観察と電気伝導特性評価の両方の観点から行ってきているために少し進度が遅れている。しかし、高品質な膜作りのためには、微細構造観察は必要不可欠であるため多少時間がかかったとしても本方法で研究を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度はラジカル酸化法を使って酸素圧力や基板温度を調整することによりCoフェライトの作成を行ってきた。酸化により形成される相は主に酸素圧力と温度によって決定するために、プロセスパラメータとしては今後もこの2つで行う。室温で絶縁体特性を劣化させている酸素欠陥の制御はその起源が未だ明らかでないため非常に難しいが、今後は、もう一つの酸化方法であるラジカル酸化を試す予定である。それと同時にCoフェライトを蒸着源としたリアクティブ雰囲気でのCoフェライト膜作成も行い、逆位相境界や酸素欠陥の少ない薄膜を目指す。 現在はこれをMgO単結晶基板上に行っているが室温で絶縁体のCoフェライトが形成できたら、Si上でのCoフェライト薄膜の形成を行っていく。Siも酸化しやすいのでいかに清浄なSiとCoフェライト界面を実現するかが鍵となる。そのためにはMgOなどのトンネルバリアを挿入することも考えなければいけないかもしれない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ラジカル源、EB蒸着源に使用予定。ラジカル源を用いた実験は昨年度できなかったのでそれに使うための予算を本年度に繰り越している。本年度は当初の計画通り約220、0千円でラジカル源の増設を行う。EB蒸着源はシャッターや水回りなどの追加工事を少し行う予定である。
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