2012 Fiscal Year Research-status Report
海底熱水鉱床開発の社会受容性と事業性評価に関する研究
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23656546
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
多部田 茂 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (40262406)
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Keywords | 海底熱水鉱床 / 事業性評価 / モンテカルロDCF / 環境リスク |
Research Abstract |
海底熱水鉱床開発の産業化に向けた主な課題として、開発に伴う環境や生態系への影響への懸念と、投資の際の事業性が挙げられる。特に、海底資源開発では金属品位、価格、環境リスクなどの不確実要因が多いため、事業性評価に関する定量的な議論が進まず、事業者側にとって参入し難い状況になっている。前年度は、環境影響に関する社会受容性に着目し、環境と経済を考慮した持続可能性の定量的な評価を行うために、専門家へのアンケートによる海底熱水鉱床開発の環境リスクの定量化を行った。今年度は、環境リスクを含めた不確実性を考慮した海底熱水鉱床開発の事業性評価を試みた。具体的には、伊豆・小笠原海域の熱水鉱床から年間150万トンの鉱石を採掘する事業を対象として、鉱量・品位・金属価格・環境リスクを不確実要因として考慮したモンテカルロDCFによって、海底熱水鉱床開発事業のNPVを算出した。その際、従来考慮されていなかった環境リスクによる費用を、専門家へのアンケート結果に基づいて定量化した。NPVの期待値は正となったがばらつきが非常に大きく、NPVが負になる確率もかなり高いことから、熱水鉱床開発における事業リスクが大きいことが定量的に明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
海底熱水鉱床開発の事業性評価に関して、シナリオやパラメータの見直しを行ったため、当初の予定よりやや進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討により、海底熱水鉱床開発は事業リスクが大きいことが確認された。そこで、リスクの高い事業への投資の意志決定を支援する方法として、金融工学手法のリアルオプション法を適用する。リアルオプション法は、金融工学のオプション価格を算出する手法をプロジェクト価値の評価に応用した手法であり、不確実性の高い事業に対して柔軟な対応を考慮した評価が可能である。前年度までの検討結果を用いて海底熱水鉱床開発に伴う様々なリスクを定量化し、それらを考慮したリアルオプション法による評価を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海底熱水鉱床開発の事業性評価にかかわる情報収集を目的として学会や研究会に参加するための旅費、研究成果を発表するための論文投稿料等に使用する。
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