2011 Fiscal Year Research-status Report
ELMに伴う壁へのプラズマ熱負荷軽減に向けての新たな学術基盤の構築
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23656578
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Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
高村 秀一 愛知工業大学, 工学部, 教授 (40023254)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 核融合 / プラズマ-壁相互作用 / タングステン / ヘリウム損傷 / 繊維状ナノ構造 / 過渡的熱負荷 / 電子放出 |
Research Abstract |
(1)ELMに特徴的な高速電子を含むプラズマのシースを介した熱伝達係数実測の試み. ヘリウム・プラズマがタングステン表面にもたらす,シースを介したプラズマ熱流束の評価には,表面形態が時々刻々に変化するため,工夫が必要である.タングステン板に加えるバイアス電圧を正弦法的に-27~-198V(周期160s)にわたって変化させ,黒色化過程の最初(まだナノ構造が形成されていない)と約70分経過した最後(十分ナノ構造が形成された後)において表面温度と全放射率を用いて熱流入量を求めた。 シース電圧の変化に対する熱伝達係数の実験値は高温電子をマクスウェル分布しているとして導出した理論曲線と異なるのはやむを得ない.マクスウエル分になっていないからである.しかし,イオンバイアス領域の傾きからあらわれるイオンのエネルギー反射係数がナノ構造形成前後で0.60→0.66~0.78と大きくなることが見出された.このような結果はこれまでにない発見であり,ナノ構造がスプリング的な働きを持つと解釈される.(2)電子放出に対するヘリウム・イオンのオージュ効果の寄与 タングステン表面におけるヘリウムプラズマによるナノ構造形成過程において,浮遊電位が深くなる現象が観測されてきている.プラズマ発生装置AIT-PIDでは高速電子が存在し,それによる2次電子放出が原因と考えてきた.しかし,高温電子が入ってこれない深いバイアス電圧印加においてもナノ構造形成と共にイオン電流の低下が見られた.すなわち形成前はイオンのオージュ効果による電子放出があり流入電流は大きいのに対して形成後は電子が出られなくなり正味のイオン電流のみとなり流入電流としては低下する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的の3項目の内,(1)熱流束の体系的理解に関してはほぼ達成し,イオンのエネルギー反射がナノ構造形成に伴って増加するという新しい知見も得られた.(2)電子放出に関しては高速電子だけでなくヘリウムイオンが電子放出をもたらすことを明らかにし,オージュ効果によるという新しい可能性も見出された.
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Strategy for Future Research Activity |
目的(1)熱流束,(2)電子放出に関しては精緻化を行い,信頼性を高める.(3)に関しては電子ビーム注入でELMを模擬し,パルスバイアス法や材料の選択等により熱負荷軽減の道を探る.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
熱負荷評価の精緻化のために,高速で制御できる高圧電源を導入し,電子ビームによる熱負荷校正実験をナノ構造形成タングステンについても繊維状ナノ構造を消失させない程度に早く行えるようにする. 研究費の主要な用途は,電子ビーム校正実験のための消耗品の購入,IAEAの核融合エネルギー会議での発表の旅費ならびに論文投稿料に主としてあてる.本年度2万円余の繰り越しを行った。これは消耗品等の購入の残であり、次年度の予算と合わせて有効に使用するためである。
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Research Products
(18 results)