2012 Fiscal Year Annual Research Report
ニホンザルのキノコ食を通じた菌類の胞子散布機構の解明
Project/Area Number |
23657018
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
半谷 吾郎 京都大学, 霊長類研究所, 准教授 (40444492)
|
Keywords | 霊長類 / ニホンザル / 真菌 / キノコ / 胞子散布 / キノコ食 / 採食行動 / 屋久島 |
Research Abstract |
菌類の繁殖器官であるキノコは、昆虫や哺乳類など、多くの動物によって採食される。研究課題では、菌類は動物にキノコを食べられることで胞子を散布し、特定の動物に散布されるため(あるいは採食されないため)にキノコ毒、におい、動物にとっての栄養成分、特有の色、堅さなどの形質を持つようになったという仮説を検証することを最終的な目標とする。本年度は、野生ニホンザルの行動観察資料のとりまとめと、ニホンザルの胞子散布についての室内実験を行った。 屋久島での14月間の行動観察と、その際に採取したキノコ断片の遺伝子解析により、以下のことが明らかになった。(1)ニホンザルは年間を通じて、少なくとも67種もの多様なキノコを採食する。(2)年間のキノコ採食時間は、全採食時間の2%程度に過ぎず、ニホンザルにとってキノコは重要な食物だとはいえない。(3)サルはキノコの利用可能性が高い時期にキノコの採食を増やし、キノコの採食の季節変化は他の食物とは無関係なので、キノコは比較的好んで食べられる食物だと考えられる。(4)サルが手に取った食物をすぐに食べてしまう場合、キノコの検査をする場合に比べて毒キノコが含まれる割合が低くなっていたので、サルはある程度毒キノコについての知識を持っていると考えられる。(5)一方、サルが検査して最終的に食べたキノコと拒絶したキノコの間には、毒キノコの割合に差がなかったので、サルが匂いをかいだりする検査行動そのものは、毒キノコの判別には有効でなかった。(6)サルが食べるのを途中でやめたキノコは、全部食べたキノコに比べて毒キノコの割合が高かったので、味によってある程度毒キノコを判別できる可能性が高い。 一方、室内実験については、飼育ニホンザルにキノコを食べさせることができなかったため、菌根菌が作るキノコを採食した野生のサルの糞を、ブナ科実生に接種する実験を行うこととし、その準備中である。
|
Research Products
(3 results)