2011 Fiscal Year Research-status Report
金属含有タンパク質における原子別酸化還元状態決定法の開発
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23657073
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹田 一旗 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (30332290)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | タンパク質 / 異常分散効果 / 金属 |
Research Abstract |
光合成や呼吸に関与するタンパク質の多くには、補因子として複数の金属原子が含まれていて、機能発現において中心的な役割を担っている。同じ種類の元素が複数含まれる場合であってもそれぞれ異なる酸化還元状態をとる可能性がさまざまなタンパク質について指摘されている。したがって、金属原子の酸化還元状態を知ることは機能発現機構を解明するためには重要である。ところが、タンパク質のX線結晶構造解析からは酸化還元状態についての直接的な情報は得ることができない。そこで本研究では、金属原子を含むタンパク質の結晶を研究材料にして、精度よく原子ごとの酸化還元状態を決定する方法の確立を目的として研究を行っている。平成23年度に実施した研究の成果として、大型放射光施設SPring-8のビームラインBL41XUを使用して回折実験条件の検討をおこない、酸化型と還元型の高電位鉄イオウタンパク質(HiPIP)の結晶について、吸収端近傍(1.74 Å=7.1 keV)で2eVおきにそれぞれ14個の回折データを収集することができた。データ収集時にヘリウム吹き付け冷却装置を用いて結晶を40Kまで冷却し、さらにはデータセットごとに照射位置を変更するなどの工夫により、収集した回折データにはX線損傷の影響が見られないことを確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の目標として、ミオグロビンとHiPIPについての回折データ収集を挙げていたが、結晶サイズの問題から、ミオグロビンについては回折データを収集することができなかった。そのかわりに、HiPIPについては酸化型と還元型の両方の回折データを収集することができた。HiPIPは分子中に4Fe-4Sクラスターを持ち、今回提案する測定方法によらなければ、各鉄原子の情報を独立に取得することは不可能である。したがって、両方の状態のデータが揃ったことは大きな進展である。また、実験条件を詳細に検討し、最終的にX線損傷の影響が見られない回折データを収集することに成功した。これは本来の酸化還元状態を明らかにするためには非常に重要である。したがって、本研究はおおむね順調に進展していると評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
収集した回折データの解析に関し、データセット間のスケーリング方法や、異常分散差フーリエ図の作成方法、プロット方法を検討し、実用化、汎用化に向けた取り組みを行う。酸化型と還元型のHiPIPの解析結果を比較することで、どのエネルギー領域にどのような変化が検出されるのかを検討する。これにより、重点的にスキャンするべきエネルギー範囲を決定しさらに精密なデータを収集する。また、平成23年度に達成することができなかったミオグロビンの回折データを収集する。さらには、ほとんどの金属含有タンパク質に適用可能なはずであり、とくに光合成や電子伝達に関与するタンパク質への応用を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費(1,400,000円)の内訳は、培養、精製および結晶化をおこなう試薬や器具の購入(900,000円)、データの保存や解析に必要な電子媒体の購入(20,0000円)、冷却用ヘリウムの購入(300,000円)である。これにより、測定に必要な結晶の準備からデータ処理までをおこなうことが可能である。旅費(300,000円)の内訳は、放射光施設への旅費(200,000円)、研究成果報告のための旅費(100,000円)である。放射光施設への旅費には実験補助をおこなう大学院生の分も計上してある。人件費・謝金(200,000円)は投稿論文の英文校閲に使用する。その他として、論文投稿料(100,000円)を使用する計画である。
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