2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23657148
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高岡 勝吉 大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (90551044)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 卵割 / 受精 / 極性 |
Research Abstract |
本研究は、4~8細胞期において、マウス胚が発生過程で最初の極性を獲得する現象を新たに提唱し、その機構を解明することを目的とする。4細胞期のマウス胚は、各割球をばらばらにするとそれぞれ1個体として発生するが、8細胞期ではそのような適応能は見られない。このことから、4~8細胞期にかけてマウス胚が何らかの極性を獲得していると考えられるが、解析手段がなく長年その実体は不明であった。申請者は8~16細胞期特異的に胚の片側の割球での発現を制御しているエンハンサー領域を発見した。本研究は、この実験結果を基に、意義と発現制御機構について解析し、最初期の極性の獲得機構解明に挑戦する。 ショウジョウバエを含む多くの生物は、卵子の段階で、bicoidなどの母性効果遺伝子のmRNAが非対称分布し、bicoidタンパクが濃度勾配を形成することで、後の形態形成の基盤となる最初の分子レベルでの極性を獲得している。対して、我々ヒトやマウスといった哺乳類は、受精卵の初期段階で非常に高い適応能を有することから、受精卵の初期段階では極性がないと考えられている。これまでの報告によれば、2-4細胞期のマウス胚の割球をばらばらにしても、それぞれ別々の完全な個体として生まれてくるが、8細胞期の胚では個体になることができない。すなわち、4細胞期から8細胞期にかけて、割球ごとの全能性が消失し、胚全体として極性を獲得していると一般的には考えられている。以上より、マウス胚では4~8細胞期において最初の極性を獲得していると予想される。しかし、これまでの研究では解析手段がなかったため、この最初の極性獲得という現象の実体は未知であった。本研究は、8~16細胞期特異的に胚の片側の割球での発現を制御しているエンハンサー領域の意義と発現制御機構について解析し、最初期の極性の獲得機構解明に挑戦している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、マウス胚4~8細胞期における最も初期の極性獲得機構を解明するために、8~16細胞期特異的に胚の片側の割球での発現を制御しているエンハンサー領域を解析し、アプローチしようとしている。DsRed2やVenusを用いたトランスジェニック胚でも同様の発現パターンが見られたことから、Tgが偶然挿入されたゲノム領域に関係なく、エンハンサー領域だけに依存することがわかった。また、エンハンサー解析の結果、コア配列を含む100bpに同定した。エンハンサー領域の発現細胞の運命追跡実験を行った結果、予想外な胚組織への寄与するという規則性が見られた。以上は、予想以上の結果であり、今後さらに詳細に解析を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
DsRed2やVenusを用いたトランスジェニック胚でも同様の発現パターンが見られたことから、Tgが偶然挿入されたゲノム領域に関係なく、エンハンサー領域だけに依存するという結果より、今後、このエンハンサー領域を用いて、経時的観察をおこなうことで、細胞死などの複雑な細胞の挙動等も視野に入れて、詳細な発現細胞の追跡実験を行う予定である。また、エンハンサー解析を行い、コア配列を同定する。エンハンサー領域の発現細胞の運命追跡実験を行った結果、予想外な胚組織への寄与するという規則性が見られたことから、このエンハンサー領域が生物学的意義があると考えており、この発現細胞で発現する遺伝子を同定しようと計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予想外のトラブルが起き、予算を繰越すに至ったが、研究の進度は順調であり、繰越金の大部分は人件費に、その他はプラスティック器具などの物品費に使用する。また、学会で情報収集及び、得られた成果を発表するために、旅費を計上した。
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Research Products
(5 results)