2011 Fiscal Year Research-status Report
ギボシムシゲノムに見出された昆虫性決定遺伝子の機能解析
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23657154
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 雅京 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (30360572)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 国際情報交流 / ギボシムシ / 性決定 / transformer遺伝子 / 進化 / 半索動物 |
Research Abstract |
ギボシムシ(Saccoglossus kowalevskii)のESTデータベース上に見出された、昆虫の性決定遺伝子traに相同性を示す遺伝子(便宜上Sktraと呼ぶ)が、実際にギボシムシ体内で発現していることを確認する目的でRT-PCR解析を行った。Saccoglossus kowalevskiiはアメリカ近海にのみ生息するため入手が困難であると判断し、代用サンプルとして日本産のギボシムシの1種シモダギボシムシ(Balanoglossus simodensis) を供試することにした。なお、シモダギボシムシは宮本教生博士(独立行政法人海洋研究機構)に分与して頂いた。胚子、孵化後5日目の幼生、孵化後1ヶ月の幼生、幼若体由来のcDNAを用いたRT-PCRを行った結果、2種類の転写物の存在を確認することが出来たが、塩基配列解析の結果、これらの遺伝子はSktraとは全く異なる遺伝子であることが明らかとなった。Sktraが供試した組織やステージにおいて発現していない可能性が考えられたため、成体の卵巣と精巣から再度cDNAを合成しなおし、改めてRT-PCRを行ったが特異的増幅産物を得ることは出来なかった。ゲノムDNAを用いてPCRを行った場合も特異的増幅産物を得ることが出来なかったことから、シモダギボシムシはSktraを持たないか、もしくはシモダギボシムシのtraはSktraとは著しく異なる塩基配列からなることが予想された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で着目しているSktra遺伝子はアメリカ原産のギボシムシであるSaccoglossus kowalevskiiのゲノムに見出された遺伝子である。本種はアメリカ近海にのみ生息するため入手が困難であると判断し、代用サンプルとして比較的入手の容易な日本産のギボシムシの1種シモダギボシムシ(Balanoglossus simodensis)を実験に用いることにした。しかし、上述したようにシモダギボシムシはSktraを持たないか、もしくはシモダギボシムシのtraはSktraとは著しく異なる塩基配列からなるという予想外の研究展開となってしまったたため、当初予定していたSktraの発現プロファイルを確認するという研究目標は、残念ながら現時点でも達成することが出来ていない。
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Strategy for Future Research Activity |
シモダギボシムシを供与して下さった宮本教生博士と相談した結果、シモダギボシムシを用いた解析を断念し、アメリカからSaccoglossus kowalevskiiを入手して改めて解析をやり直した方が良いとの結論に至った。そこで、宮本教生博士に紹介して頂いた、Saccoglossus kowalevskiiのESTデータベースや全ゲノム解読プロジェクトのリーダーであるChris Lowe教授(スタンフォード大学)にサンプル分与等の研究協力を要請することにした。この点については既に先方からの了承を得ることが出来ており、Saccoglossus kowalevskiiの成体の精巣と卵巣のサンプリングが終了次第、サンプルを送付して頂く予定になっている。また、あわせてSktraの完全長cDNAを含むプラスミドDNAも分与して頂く予定となっている。今後はこれらのサンプルを用いて解析を行うことにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
Sktraの完全長cDNA含むプラスミドDNAを塩基配列解析に供試し、その全長構造を決定すると共に、その塩基配列を基に複数のプライマーを設計する。一方、Saccoglossus kowalevskiiの成体の精巣と卵巣からtotal RNAを抽出し、cDNAを合成する。以上のプライマーとcDNAを用いてRT-PCRを行い、精巣及び卵巣におけるSktraの発現パターンに雌雄差が見られるか否かを確認する。もし可能であるなら、精巣や卵巣以外の組織やステージ由来のサンプルを分与して頂き、RT-PCR解析に供試することによって、Sktraの発現プロファイルについて出来るだけ精密に調べる。次にSktraの機能解析を行うため、RNAiによるノックダウン実験を実施する。但し、Saccoglossus kowalevskiiにおけるRNAi実験は試行錯誤段階にあるため、必ずしも良好な結果を得られるとは限らないと予想される。そこでキイロショウジョウバエのpseudo-male(遺伝的にはメスであるが、traに変異をもつためオスになる個体)のゲノムにSktraを挿入し、pseudo-maleが正常なメスへと分化するか否かを観察することによってSktraがショウジョウバエのtraと同様、メス決定能をもつか否かを評価することによってSktraが性決定遺伝子として機能的に保存されているか否かを検討する。
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Research Products
(1 results)