2013 Fiscal Year Research-status Report
ピンクのカマキリはどうやって生まれたか:花に擬態するランカマキリの体色進化の解明
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23657162
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
真野 弘明 基礎生物学研究所, 生物進化研究部門, 特別協力研究員 (80376558)
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Keywords | ランカマキリ / 色素 / 体色 / 酸化還元 / キサントマチン / 擬態 / カマキリ / 自己凝集体 |
Research Abstract |
これまでの研究成果により、ランカマキリの体色のピンク色は、キサントマチン分子の自己凝集体によって生成されると予想された。しかし、キサントマチンの自己凝集体がランカマキリの生体内に存在することの直接的な証拠は得られていない。本年度の研究では、昨年度に引き続き、生体内の色素状態の解析を行った。まず、キサントマチンの凝集体と単体色素のそれぞれを生化学的手法によって分離することを試みた。アガロースゲル・ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動、およびDiol修飾シリカゲルカラムを用いたサイズ排除クロマトグラフィーによる凝集体の検出を試みたが、担体への色素の非特異的吸着等による困難があり、上手く行かなかった。そこで、次のアプローチとして、顕微鏡観察によって生体内の色素状態を解析することにした。光学顕微鏡を用いた観察の結果、ランカマキリの生体内においては、キサントマチン色素が大きいもので直径1-2マイクロメートル程度の大きさを持つ、やや不規則な形状の顆粒として存在することが判明した。一方、他の体色を持つオオカマキリやランカマキリの1齢幼虫においては、キサントマチン色素顆粒は0.5-1マイクロメートル程度の大きさを持ち、球形に近い構造をとっていた。以上の結果は、ランカマキリの生体内において、キサントマチン色素が通常とは異なる凝集体として存在することを示唆している。現在、この色素顆粒の形状に関し、透過型電子顕微鏡を用いたより詳細な解析を行っている最中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
生体内におけるキサントマチンの自己凝集体の検出方法に関しては、交付申請段階では有効な方法の模索中であったが、昨年度および今年度に新たな研究方法の着想を得て、新規の実験計画を立案した。このように、本年度の研究成果は交付申請書に記載の年間計画とは若干細部が異なるものの、これらは全て予期せぬ発見および新たな着想による計画の変更であり、また研究の目的である「一般的な色素キサントマチンがどのようにランカマキリ特有の体色を形成しているのか?」に対して完全に合致した内容である。これら新規実験に関しての経過は「研究実績の概要」欄に記載のとおりであり、昨年度より引き続き行った生化学的解析に関しては技術的な困難があり断念したものの、その後に行った顕微鏡を用いた組織学的解析については良好な成果が得られている。本研究には前例となるような研究が存在せず、実験の遂行には手法選定を含めた多くの試行錯誤が必要なため、研究の進展は当初計画と比べてやや遅れているものの、大きな技術的困難に関してはすでに克服できており、今後1年間の延長期間内に成果を論文として発表できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果により、生体内における色素の性状解析に顕微鏡観察が有効であると判明した。平成26年度は透過型電子顕微鏡による観察を主とした解析を行い、ランカマキリの生体内におけるキサントマチン凝集体の存在を証明する。また、より詳細な生化学的解析を併せて行い、それらの成果をまとめて論文として発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の進展に伴い、当初計画にはなかった透過型電子顕微鏡による観察を新たに行う必要が生じたため、その研究遂行および成果発表に必要な費用を次年度に繰り越した。このような研究の進展にともなう計画変更は予想できない性質のものであり、また研究の遂行において必要不可欠であるため、当該研究費の繰り越しは正当な理由である。 繰り越し分の約126万円に関しては、56万円を電子顕微鏡観察および生化学実験に用い、30万円に関しては論文の作成および投稿のための経費として使用する予定である。残りの40万円に関しては実験補助人員を新たに雇用するための経費とし、研究遂行の効率化をはかる予定である。
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Research Products
(1 results)