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2011 Fiscal Year Research-status Report

微生物金属代謝能を利用した機能性金属ナノ粒子合成系の開発

Research Project

Project/Area Number 23658078
Research InstitutionKyoto University

Principal Investigator

川本 純  京都大学, 化学研究所, 助教 (90511238)

Project Period (FY) 2011-04-28 – 2013-03-31
Keywords応用微生物学 / 特殊環境微生物 / 環境農学
Research Abstract

ナノサイズ加工された金属ナノ粒子は、バルク材料とは異なる物理化学的特性を示し、様々な機能を発現する有用材料である。金属ナノ粒子の反応特性は、粒子のサイズ、大きさによって顕著に変化する性質を有しており、ナノメートル空間での精密合成が求められている。近年、均一な金属ナノ粒子の生産場、さらに無機反応触媒環境として金属ナノ粒子含有タンパク質が注目されている。本研究は、優れた金属代謝能を有するShewanella 属細菌の金属代謝機構を明らかにし、本菌の金属代謝能を積極的に強化することで、微生物を用いた金属ナノ粒子合成系の開発を目指した。 南極海水より単離された好冷性細菌 Shewanella livingstonensis Ac10 は、鉄やクロム、マンガンのような多様な金属の酸化物を最終電子受容体として利用することが可能である。S. livingstonensis Ac10 を三価鉄 (クエン酸鉄) もしくはフマル酸を含む培地で嫌気的に培養し、三価鉄存在下で生産量が増加するタンパク質を2次元電気泳動に供した。クエン酸鉄存在下で生産量が増加するタンパク質を抽出し、その内の8 種について MALDI-TOF MS を用いたペプチドマスフィンガープリンティング法で同定することができた。その結果、遺伝子の転写や翻訳に関与する RpsA、Tsf、PheT、翻訳後の修飾や輸送に関与する Tig、TufB、PpsA、外膜を介した可溶性分子の輸送に関与する Omp、PhoE が三価鉄存在下で誘導生産されることが示された。これらのタンパク質群が、本菌の異化的金属還元機構に重要であることが示唆された。本タンパク質群について、タンパク質工学的な機能強化を図ることで、本菌を用いた金属ナノ粒子合成システムの効率化が可能となることが期待された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究では、嫌気環境下での金属還元能を有する好冷性細菌 S. livingstonensis Ac10 の金属呼吸に関与するタンパク質を明らかにすることで、金属還元機構の分子基盤を解明し、金属ナノ粒子生産系への応用を目指している。平成 23 年度では、本菌の鉄呼吸に関連するタンパク質、特に金属イオンの認識、輸送、結合に関与する膜タンパク質に着目し、三価鉄存在下で生産量が増加するタンパク質についてプロテオーム解析を行うことで、金属呼吸関連タンパク質群を網羅的に解析した。その結果、三価鉄依存的に生産量が増加するタンパク質を 8種同定することに成功し、グラム陰性細菌の外膜に存在するチャンネルタンパク質である PhoE の生産量が三価鉄存在下で増加していることがわかった。 PhoE は、 大腸菌や Pseudomonas 属細菌においてリン酸欠乏時に発現が誘導される膜タンパク質として知られている。PhoE は正電荷を有するアミノ酸が局在する親水的な筒型構造を生体膜上で形成することで、 リン酸イオンを特異的に取り込む輸送体と考えられているが、嫌気環境下での金属代謝との関連は現在報告されていない。この結果は、ウランやプルトニウム、セレンやクロムといった多様な金属酸化物の還元能を有する Shewanella 属細菌が、従来報告されている微生物の金属呼吸とは異なるメカニズムを有していることを示唆しており、当初計画していた本年度研究目標を概ね達成しているといえる。一方で、本菌の鉄呼吸における PhoE の重要性についての遺伝学的検証や鉄以外の金属酸化物との関連などは明らかでなく、平成24年度に継続することとした。

Strategy for Future Research Activity

平成23年度の結果から、金属代謝能を有する好冷性細菌 Shewanella livingstonensis Ac10 は三価鉄存在下で、リン酸選択的輸送体として知られている外膜チャンネルタンパク質 PhoE を誘導生産することがわかった。PhoE は、大腸菌においてリン酸欠乏時に誘導発現される外膜タンパク質であり、正電荷アミノ酸が局在する親水性のチャンネルドメインを形成する輸送体であることが報告されている。一方で、PhoE が細菌の鉄呼吸との関連は報告されておらず、S. livingstonensis Ac10 がこれまで報告例のない鉄輸送機構を有していることが示唆され、特に本菌は陰イオン性の媒介物質との結合を介して鉄 (III) イオンを取り込んでいる可能性が予想された。以上の可能性を実証するために、本研究では S. livingstonensis Ac10 の鉄呼吸機構における PhoE の生理機能を解明するために、phoE 遺伝子欠損株を作製し、本菌の鉄呼吸能への影響を解析する。また、phoE 遺伝子は機能未知の ABC 輸送体のホモログや、2成分制御系関連タンパク質などをコードする種々の遺伝子群で構成される pho 遺伝子クラスターに存在していたことから、pho 遺伝子クラスターの構成遺伝子についても鉄呼吸能との関連を解析する。また、Shewanella 属細菌は鉄呼吸に伴って鉄ナノ粒子を形成することが報告されていることから、上述の各遺伝子破壊株のナノ粒子形成能についても解析する。さらにクロムや銀などの他の金属酸化物を用いた金属呼吸における PhoE の生理機能を解析することで、Shewanella 属細菌の多様な金属還元能における金属酸化物の取り込み機構を明らかにする。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

平成 24 年度は、遺伝子組換え 株の作製、および変異型タンパク質の調製を計画しているが、そのために必要な試薬の購入にそれぞれ 30 万円ずつ見込んでいる。 また、平成 23 年度同様、無機金属試薬購入費として 30 万円、金属ナノ粒子合成に必要なプラスチック器具代、培養用試薬購入費として、それぞれ 20 万円を計上している。また、無機反応 に使用するガラス器具購入費として 5 万円を計上している。さらに、成果発表を行うための旅費として 10 万円(5 万円 X2 回)、論文投稿 料として 10 万円(5 万円 X2 回)を見込んでいる。

  • Research Products

    (2 results)

All 2011

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] Favourable effects of eicosapentaenoic acid on the late step of the cell division in a piezophilic bacterium, Shewanella violacea DSS12, at high-hydrostatic pressures.2011

    • Author(s)
      Kawamoto J, Sato T, Nakasone K, Kato C, Mihara H, Esaki N, Kurihara T.
    • Journal Title

      Environ Microbiol.

      Volume: 13 Pages: 2293-2298

    • DOI

      10.1111/j.1462-2920.2011.02487.x.

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 低温菌 Shewanella livingstonensis Ac10 の低温環境適応機構におけるエイコサペンタエン酸の生理機能2011

    • Author(s)
      川本純、栗原達夫
    • Organizer
      第12回極限環境生物学会年会
    • Place of Presentation
      長崎大学
    • Year and Date
      2011年11月27日

URL: 

Published: 2013-07-10  

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