2011 Fiscal Year Research-status Report
高輝度蓄光性顔料を利用した魚類の超省エネ成熟誘導技術開発への挑戦
Project/Area Number |
23658165
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
竹村 明洋 琉球大学, 理学部, 教授 (40222103)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 蓄光シート / 光周期 / 性成熟 / ルリスズメダイ / 光受容体 / 省エネ |
Research Abstract |
本研究は、高輝度蓄光性顔料(ルミノーバ)を人工光源の代わりに利用することで、魚類の成熟を制御する新たな方法の開発することを目的とした。本研究では実験魚として、ルリスズメダイを用いた。まず、ルミノーバの発光波長とほぼ同様の吸収波長帯をもつ網膜光受容体(VAL opsin)の遺伝子をクローニングし、推定アミノ酸配列に基づくペプチド抗体を作成した。作成した抗体は脳及び網膜抽出物は特異的に反応し、Western blotting で47kDa付近に一本のバンドが認められた。また、同抗体を用いた免疫組織化学的検出の結果、眼においては網膜の水平細胞やアマクリン細胞周辺とガングリオン細胞に陽性反応が確認された。また、脳においては、間脳域の第三脳室下部の外側隆起核背部に陽性反応が確認された。高輝度蓄光性顔料を含むシートで水槽を被う群(実験群)と同顔料を含まないシートで水槽を被う群(対照群)を設け、産卵期の魚を飼育して生殖腺体指数(GSI)を比較した結果、実験開始45日目までの実験群および対照群のGSIに有意な差は認められなかったが、同60日と75日目において、実験群のGSIは対照群のそれよりも有意に高くなった。卵巣を組織学的に観察した結果、実験開始30日と45日後の実験群および対照群の卵巣内は成熟した卵母細胞で占められていた。60日後の実験群の卵巣内は第一次卵黄球期から第三次卵黄球期までの成熟した卵母細胞で占められていた。一方、同期間の対照群の卵巣は周辺仁期や油球期などの未熟な卵母細胞だけであった。75日後の実験群では第三次卵黄球期などの卵母細胞が観察されたのに対し、多くの対照群では周辺仁期の未熟な卵母細胞で占められていた。以上の結果から、ルミノーバから発せされる光は産卵期のルリスズメダイの産卵期延長効果を持つことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度において、高輝度蓄光性顔料の有用性が確認され、さらに網膜外光受容体の同定もほぼ終了した。当初計画していた以上の成果が本年度内に得られた。また、成長についても若干の知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
高輝度蓄光性顔料の有用性は前年度で確認されたが、今後この新たな光源の有効利用についてさらに検討を加えて、水産の現場で即座に使えるものに改良していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用は当初計画通り行う。物品費は高輝度蓄光性顔料等の購入に充てるほか、旅費は学会参加費および、県内の調査旅費を計上する。人件費等を計上する予定であるが、これは本研究の遂行に必要な人材の雇用のためである。またその他には分子生物学的手法を外注しているためその費用として計上する。
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Research Products
(9 results)