2011 Fiscal Year Research-status Report
間葉系幹細胞の神経変性疾患病変部への走化に関わる分子群の同定
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23658233
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
堀内 基広 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 教授 (30219216)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 骨髄由来間葉系幹細胞 / プリオン / 神経変性疾患 / 走化性 / ケモカイン |
Research Abstract |
多能性幹細胞を用いる再生・細胞医療は、アルツハイマー病、プリオン病などの難治性神経変性疾患の治療法として期待されている。MSCは末梢から移植しても神経病変部に走化するという特徴を有するが、その機構は殆ど判っていない。そこで本研究では、MSCの神経変性疾患病変部への走化に関わる分子群を同定して、走化機構を理解することを目的とした。 平成23年度は、プリオン感染動物の神経病変部(脳内)へMSCが走化する際に関与するケモカイン、サイトカイン、およびそれらのレセプターを同定するために、トランスウェルを用いるin vitro走化試験を実施した。トランスウェルの内側にMSC、外側にプリオン感染マウス脳乳剤を加え、トランスウェル外側に移動するMSCを測定した。この際、プリオン感染マウス脳乳剤中に含まれるケモカイン、サイトカインを調べるために、これらに対する抗体を添加し、また、MSC上に発現するレセプターを調べるために、MSCをこれらのレセプターに対する抗体で処理した。その結果、CCR3とそのリガンド(CCL5, CCL7, CCL24)、CCR5とそのリガンド(CCL3-5)、CXCR3とそのリガンドであるCXCL10、CXCR4とリガンドであるCXCL12に対する抗体が、MSCのプリオン感染マウス脳抽出物への走化を阻害した。また、フローサイトメーターおよび間接蛍光抗体法によりプリオン感染マウス脳抽出物で刺激したMSCで、CCR3、CCR5、CXCR3、CXCR4が発現すること、遺伝子発現レベルも未刺激のものと比べて上昇することから、これらのケモカインとそのレセプターの相互作用およびこれを介するシグナルは、MSCの神経病変部への走化に関与することが示唆された。また、MSCが血管内皮細胞を通過する機構を解析するため、臍帯静脈上皮細胞を介するin vitro走化試験系を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度はin vitro走化試験を実施して、プリオン感染マウスの脳でMSCの走化に関与する可能性のあるケモカインおよびケモカインレセプターが幾つかを同定した。また、MSCが血管から脳組織に移行する機構を解析するため、in vitro走化試験に用いるトランスウェル上に臍帯静脈血管上皮細胞を培養してタイトジャンクション形成させた後にin vitro走化試験を実施する実験系を構築した。従って、研究は計画通りに進んでおり、目標は達成できたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度にin vitro走化試験で同定したケモカインレセプターが、プリオン感染マウスの脳内でMSCの走化に関与するか否かを調べるために、プリオン感染マウス脳にMSCを部位特異的に移植して、MSC上でのケモカインレセプターの発現を凍結切片の蛍光染色により解析する。左側視床に移植したhMSCは脳梁を通って反対側海馬に移動することが知られているので、hMSCを左側視床に移植後、脳梁に存在するhMSCを走化中、反対側海馬に達したhMSCを定着状態にあると見なし、当該分子とβ-galに対する抗体の蛍光二重染色により、脳梁に存在するhMSCで発現する分子と(走化に関わる分子)、反対側海馬に存在するhMSCで発現する分子(定着に関わる分子)を解析する。 MSCの走化を阻害した抗体が認識するケモカインの脳内での発現を、凍結切片の蛍光抗体染色により調べる。抗MAP2および抗NeuN抗体により神経細胞、抗Iba-1抗体によりミクログリア、抗GFAP抗体によりアストロサイトを染色し、当該分子に対する抗体との蛍光二重染色により、産生する細胞種を同定する。 MSCが血管内皮細胞を通過する機構を解析するため、臍帯静脈血管上皮細胞あるいは脳微小血管内皮細胞をトランスウエル内で培養する。タイトジャンクションの形成は、ウエル内外の電気抵抗値をMillicell-ERS抵抗値測定システムで測定して確認する。トランスウエルの外側に抗体で前処理したプリオン感染マウス脳乳剤を加え、トランスウエルの内側にMSCを加え、トランスウエル外側に移行したMSCを定量解析する。MSC上に発現する受容体に加え、血管内皮細胞に発現しマクロファージの接着に関わるVCAM, P-selectionなどに対する抗体でも阻害試験を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度も継続して、in vitro走化試験を実施する。また、平成23年度に同定された因子のマウス脳内での発現を解析するために蛍光染色を実施する。多種のサイトカイン、ケモカイン、増殖因子、およびこれらの受容体に対する抗体を使用する必要があるので、これらを購入する。市販の抗体は高価であるため、消耗品費に占める抗体類の割合が高くなる。 平成23年度に解析を予定していた数種の抗体を使用するに至らなかったために、平成23年度の研究費に一部未使用額が発生した。この抗体は平成24年度に購入してMSCの走化能への影響を解析する。 平成24年度も継続して、MSCおよび血管内皮細胞の培養を行う。細胞培養に必要な、血清、培地、およびディスポーザブルプラスチック器具を購入する。 プリオン感染マウスを用いてin vivoでの走化を解析するため、北海道大学大学院獣医学研究科の感染動物施設で、プリオン感染マウスを飼育する。動物施設では、ケージ日単価の使用料金が設定されており、利用する場合は施設使用料を支払う。プリオン感染マウスは潜伏期が非常に長いため、飼育日数が長くなり使用料も高額となるが、本研究を実施するために必要不可欠な経費であるので、動物施設使用料を計上する。
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Research Products
(9 results)