2012 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病の猫が発現する抗酸化蛋白質を主眼とする糖尿病合併症予防法の確立
Project/Area Number |
23658259
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松木 直章 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (40251417)
|
Keywords | 猫 / 抗酸化物質 / 糖尿病 |
Research Abstract |
【背景と目的】糖尿病は猫で最も多くみられる代謝性疾患であるが、人や犬と異なって重篤な糖尿病合併症は生じない。本研究では、糖尿病に罹患した猫で誘導される血清中の抗酸化物質に着目し、その同定を目的として以下の研究を実施した。【動物と方法】東京大学動物医療センターで糖尿病と診断され、インスリン治療によって血糖コントロール下にある猫を糖尿病群とし、年齡をマッチさせた猫を健康群とした。これらの猫について血清中のスーパーオキサイドラジカルならびにヒドロキシルラジカル消去能をDMPOを用いたスピントラップ-電子スピン共鳴法(ESR)により測定した。ついで猫の血清を透析膜を用いて分子量10000未満および以下に粗分画し、高分子側に分画された蛋白質をゲルろ過法によってさらに分画し、ラジカル消去能を持つ分画の分子量を推定した。さらに、血清蛋白を電気泳動し、糖尿病群の血清で特異的に増加する蛋白質を質量分析法(TOF-MS)によって推定した。【結果と考察】スピントラップESR法では、糖尿病群の血清は健康群と比較して有意に高いラジカル消去能を示した。血清中の分子量10000未満の分画では、糖尿病群と健康群でラジカル消去能に差は認められなかったが、分子量10000以上の分画では糖尿病群のラジカル消去能は有意に高かった。ゲルろ過法ではラジカル消去能は分子量40kD付近に存在すると推定された。蛋白電気泳動で分子量40kD付近の蛋白質を探索した結果、ハプトグロビン(Hp)と推定された。健康群と糖尿病群では血清Hp濃度とラジカル消去能が有意な正の相関を示した。Hpは猫の代表的な炎症性蛋白と知られているため、さらに炎症性疾患群を加えて再検討したところ、血清中のHp濃度とラジカル消去能は相関せず、その理由としてHpに結合したヘモグロビン量の差がラジカル消去能に影響すると考えられた。
|